自宅から自転車で5分とかからないところに3月から畑を借りたことは、ミラクル畑で収穫三昧。癒されてます〜♡でご報告しましたが、とにかく大家様の全面的サポートのおかげで、この1ヶ月余、毎日サラダ菜三昧、水菜三昧、春菊三昧、大根三昧、6月に入ってからはジャガイモ祭りも始まりました。
これでもかこれでもかと菜っ葉を洗ったり茹でたり炒めたり、大根をおろしたり煮たりカットして干して漬けたり、ジャガイモの泥を落として揚げたり茹でたり潰したり。
毎日毎日、ほんと、そんなことばっかりしていた気がするわ。
もちろん、ご近所さんや、ちょうど用事で訪問してくださった友人知人にもどんどんお分けしてきましたが、それでもせっかく畑を借りたんだもの、主として自家消費したいという意地がある。食べずに置いておけば、収穫してきた野菜たちがヘタれてしまう。それに畑には、次も、次の次も、またその次も、すくすくと伸びて待機しているのですよ。食べなきゃ食べなきゃ、もっと食べなきゃ〜!
こうして毎日の食卓に並ぶ野菜、野菜、また野菜。もともと野菜はたっぷり食べていたほうだと思うけど、 これほどの量じゃなかった気がする。一昨年2020年4月から、有機野菜の共同購入グループ「所沢生活村」の野菜セットも隔週で頼んでいるので、畑で採れる種類以外の野菜もテーブルに上るとはいえ、5月以降は圧倒的に自家畑率が高くなった。
だけど、「また春菊〜?」「またサラダ〜?」「また大根〜?」なんてブーたれる人は、うちには一人もいない。たぶん私が「そんなことは誰にも言わせない」というオーラをギラギラと発しているせいだと思う。ま、調理方法や味付けのバリエーションにも配慮しているし、そもそも91歳の父はさっき何を食べたかも覚えてられないので同じ野菜ばかりリピートしていることに気づいていないのかもしれない。
(となると私含めての3人家族のうちブーたれる可能性があるのは残り一人、姉しかいないんだけど笑)
そんな野菜たっぷりの食生活をしているからだろう、父のお腹の調子がすこぶる良くなってきたようだ。で、もう何年も前から毎日飲む薬のなかに処方されていた便秘薬を、今月から外してもらった。便秘薬なしでいけるか、現在、様子を見ているところだが今のところ順調だ。
血糖値対策としても、まず野菜をたっぷり、それから肉や魚、最後にご飯やパンを食べろと口をすっぱくして繰り返し言っている。でも、長年の習慣なんでしょうね、一度に全部並べてしまうと、すぐにご飯やパンから食べ始めてしまうので、父にだけは主食はあとから配膳するようにしています。
そんなわけで、このところ血糖値が若干下がってきたのは、薬の処方が変わったからかもしれないけれど、畑野菜たっぷりの食餌療法も貢献していると思う。
そんな父なのだが、「これ、畑で採れた野菜よ」と言うと、「畑の野菜は、安いのか?高いのか?」なんて野暮な問いをときどきしてきて、私をムッとさせる。
高度経済成長期にガシガシ働いた昭和一桁男は、「安いことはいいことだ」と脳裏奥深くまで刻み込まれていて、かなりボケてしまっているのに、その価値観が薄れることはないようだ。
しかし、社会全体で「安さ」を過度に追求してしまったがゆえに、環境は破壊され、気候変動が進み、食の安全は担保できなくなり、貧困の格差が広がり、働かされすぎでメンタルの不調をきたす人が増加し、社会や人の健康にひずみが生じているではないか。だからもう、安さ基準で物を選択するのはやめて負のスパイラルから抜け出そうよ、と常々思っている私にとって、家庭菜園の野菜が「安いか高いか」なんていう問い自体が、そもそもナンセンスなのである。
だいたい、大家様が全面的にサポートしてくれている畑の野菜に、どうやって価格をつけろっていうんですか? 年間の賃貸料をベースにするんですか? 大家様からいただいた苗や種は、そこからマイナスするんですか?プラスするんですか? 大家様からいただいた野菜やイチゴや花は、どうやって計算しますか? 購入した支柱や鍬は1年以上使えるだろうけど、どうやって計上するんですか? そもそも私の時給次第で安くも高くもなるんですけど、労働対価はもらってないし。
……ナンセンスな問いにムカつきながらも、ついついあーだこーだと頭を巡らせてしまう私です。どこぞのカード会社の広告みたいに「プライスレス」だなんて言葉を使いたくはないけれど、貨幣価値に置き換えられないものは山ほどあるのだ。
それにねー、土や野菜に触れることは私のストレス解消にもなっていると思うのね。気温が高くなっていく季節に畑で汗をかくことで、私の体は夏への準備をしっかり整えているようにも感じるし。6年前に原田病を発症して以来いつもどこかしら不調を抱えてきた年月だったけれど、なんだか畑のおかげで元気を取り戻せそうな気がしてるの。
畑仕事のおかげで病院とか鍼灸とかジムにかける費用がいらないなら、めっちゃお得よね? 父にしたって便秘薬不要になれば、その分の薬代は減るじゃないの。「安いのか?高いのか?」を超えて、見えない経済的メリットだって、ある。
しかも、なんといっても、これは究極の地産地消なのである。フードマイレージが極限的に小さいうえに(種は外国産も使っているから、その分を考えるとゼロとは言いきれないと思う)、畑まではたいてい自転車で行っていて、化石燃料を消費してCO2や排気ガスを排出する自動車は使っていない(っつーか、自動車持ってない)。そして、無農薬・化学肥料不使用。
トータルで、環境負荷がものすごく小さいのである。エッヘン!
というわけで、ナンセンスな問いをしてくる父に憤りながら考えるうちに、やはり私の「ミラクル畑」は市場経済での流通とは異なる次元の営みであり、多くの部分が「贈与」に支えられていることにあらためて気づくわけです。大家様をはじめ菜園の先輩たちとも収穫物や種・苗や情報の贈与が当たり前だし、ご近所さんや友人知人たちとも野菜の贈与を通じて親近感が深まってもいる。
こうして考えると、畑を借りてからわずか3ヶ月なのに、以前よりも地域コミュニティーにずいぶん根が伸ばせているみたいだ。
いや〜、ミラクル畑効果はすごい!
「安いのか?高いのか?」なんていうナンセンスな問いかけをしてくる父のおかげで、こうして私なりの価値観を言葉にしてしっかり自覚することができた。ありがとう、とーちゃん。
お礼は、もちろん野菜三昧の食事で。