フォトブックは、何でもすぐ忘れてしまう91歳の父の外付けハードディスクになれるのか?

暮らしのDIY

認知症の父は、ほとんどのことをすぐに忘れてしまう。

先だってゴールデンウィークをはさんでの2週間、91歳の父を連れて、母を迎えに春爛漫の札幌に行ってきたことも、部分的には覚えていても、全く記憶に残っていない事柄のほうが多いみたいだ。
「**で食べたアレ、美味しかったよね」と聞いても「俺はそんなもん食ってない」。
「あの日**公園に行って、楽しかったよね」と同意を求めても「俺も行ったか?」……そんな反応がほとんどだ。

せっかく長年暮らした札幌での久々の滞在だったし、北国の春爛漫の風景も美しかったし、懐かしい人々との再会もあったし、美味しいものもいっぱい食べたのに、あれもこれも思い出せないのは、かなりもったいない。

そこで、フォトブックをつくってみた。
かねてから興味はあったけれど、これといった機会がないまま5年くらい経ってしまっただろうか。でも、「この際、なるべく早くつくるぞ!」と気合が入ったのは、早ければ早いほど、すぐ忘れてしまう父の、それでもほのかに残っている記憶とリンクできるかもしれないと思ったからだ。
いざ、とーちゃんの記憶の外付けハードディスク、つくってやろーじゃねーか、と勢いづいたのであった。

利用したのは、しまうまプリント
たぶん、使ったことのある方も少なくないのでは?という、この分野ではメジャーな存在。レーザープリントなら、ほんとお手軽価格なのが魅力です。
今回、私はA5サイズ24ページ、レーザープリントで2冊つくって1,100円でした(7月から値上げらしい)。かかった時間は、写真選びから編集作業、注文まで含めて4時間程度。

ざっと説明を読んで臨んだので、ページのテンプレートを選んだり、写真を配置したり、文章を入れたりするコツをつかむのにそれほど時間はかからなかった。
こんなふうにアルバム編集がクラウドでチャチャッとできて、製本されて届く。インターネットとデジタル技術の進歩はほんとにすごいですね。

キャプションあり・なしのテンプレートがある
テンプレートと写真を選べれば編集は楽々
キャプションなしのページも挟み込んで
見開き断ち切りのレイアウトもできる

肝心の父の反応は?といえば、なかなかグッドです。
喜んでます、しばしば見返してます、そして言うんです。

「ともよ、これは商売になるぞ」

よよよ……そうきますかねぇ、あいかわらず。
そうなんです、父は私の仕事を、経済状態を、将来を、心配しているということは新事業の立ち上げのために、父から3億円の借金!?にも書いたとおりなんですが、ともかく、私の気持ちを商売に向けさせたくてしょうがない。なんでも、商売の種だと示唆したがる。
その実、「ともかく金を稼げ、しっかり働け」と父は私に言いたいんだと思います。

しかし。
娘はそれよりも、まだなんとか動けて、まだボケきっていないあいだに、残る日々を父に楽しんでほしい味わってほしい充実感に浸ってほしい。
老人になると暗黒だとか、もうダメだとか、あれもこれもできないとか否定的なことばかり並べてどんよりモサっと顔も洗わずにソファで寝たままでなんかいてほしくない。死ぬまで、できることを大切に実行して生き切ってほしいのですよ。

というわけで、父と娘の気持ちというのは、常にすれ違うものよのぉ……と遠くを見るのですが、でも、いいの。
私はいま、こうして老いた父母の世話やら住所変更の手続きやら施設との連絡係なんかをしながら、仕事はほどほどにセーブせざるをえないけど、合間を縫ってフォトブックをつくったり畑で野菜を育てたりその野菜で料理したりブログを書いたりしているのが楽しいの。
フンッ!! 商売したくなったら、言われなくたって喜んでやってやるわ。いまに見ておれ。

母が入院中、父の写真をプリントして手作りアルバムにして送っていた。
こういうのも、デジタルと一味違った楽しさがある