91歳の父を連れて、母を迎えに春爛漫の札幌へ行ってきた

日々の楽しみ

連休前の4月27日から連休明けの5月11日にかけての二週間、はるばる札幌まで行ってきた。

今回の旅の第一のミッションは、9ヶ月にわたって入院していてほぼ寝たきり状態になってしまった母を、なにはともあれ私たちが住んでいる所沢に連れてくることだった。

第二のミッションは、91歳の父に久しぶりの札幌を楽しませてあげること。
昨年2021年8月に母の入院を機に、一人暮らしのできない父は姉と私とともに所沢で日々を過ごしている。ときおり「ここは札幌か?函館か?」などと混乱をきたすことがありながらも新しい生活に馴染んできた。とはいえ、「俺は札幌に用がある」「弟に会いにいかなきゃならん」などと長年住み慣れた街に帰ることを時折切望している様子だったので、お気に入りの散歩道を一緒に歩いたり、叔父との再会の機会をつくったりして喜ばせてあげたかった。

そんなわけで、超高齢の父を姉と一緒にサポートしての空の旅、そして長い長い冬のあとに一気に花開く春の北国の散策と美味しいもの三昧とあいなった。

な〜んて言うと、キラキラ素敵なゴールデンウィーク♪を想像されるだろうけれども、その実、認知症の父はしばしば不機嫌になったり怒りっぽくなったりするし、日時や予定を何度も質問してきたり状況判断ができなくてしょっちゅう混乱したりするので対応がいちいち大変。
しかも、なるべく父がご機嫌さんでいられるように、やらねばならない銀行の手続きやら事務作業ばかりが立て込まないよう日程をゆるめに配分し、天気の良い日は中島公園や大通り公園や円山公園を車椅子を押して散策したり、かつて父が贔屓にしていた近所のカフェに行ったりとお楽しみを盛り込みながら最大限の配慮をしているにもかかわらず、私たちが忙しくてかまってあげられないときに限ってイチャモンをつけて物事を面倒にしたり、ぬっと寄ってきて「俺は、お前たちを警察に訴えようと思ってるんだ。俺の金を全部取り上げて、これは人権侵害だ」なんて言いがかりをつけてきたり、まったくまったく、やたらと手の焼けるボケ老人なのである。
9ヶ月ともに暮らしてきて、このテの言動に慣れてきた姉と私は、「また言ってるよ」と一緒に笑い飛ばし、「うちら成長したよねー」と褒め称えあえたのは幸いなことだと思うが。

さらに大変だったのは、母を所沢に連れてくるにあたって母の衣類をはじめいくつかの家具や仏壇や食器などを単身用の引越サービスを利用して送るという計画の遂行であった。
無類の衣装持ちだった母は、断捨離とか終活などの言葉を知る前に脳梗塞で半身不随になってしまい、近年、私たちが介護に訪れるたびに片付けを進めてはいたのだけれど、いざ必要な衣類を選別しようとすると、まぁ簡単にはいかないのであった。まずは、タンスやプラスチックケースや箱類に詰まっているそれらを出して、夏物・冬物・春秋物という大分類と、上着・ズボン・スカート・ワンピース・下着・靴下・パジャマなどの中分類を同時に行いながら、ついでに汚れや傷みをチェックし、送るもの・捨てるもの・保留の判断をする。その基本選別に、私は3日にわたって10時間ほど費やした。どんだけの量だったか、想像してみてほしい。
はじめのうちは、ラメ入り柄物の肩パットぶいぶいのパーティー用スーツや、ヒョウ柄のシャツ類なんぞを姉と順番に試着して「美川憲一みた〜い!」「服に着られてるぅ」などとポーズをとってはゲラゲラ笑いあっていたのだが、次第にそんな余裕はなくなり、底なし沼に足をとられてあがいているような重苦しさに心がどんより濁ったり、あげくのはてに「こんなに処分したら洋服の神様にたたられるのではないか?」と恐ろしさがこみ上げてきちゃったり。最初のうちは送るべき衣類は洗濯していたのだがだんだん追いつかなくなり、処分に迷うものはまたの機会にと目をつぶって引き出しや袋に整頓し直すだけにとどめざるをえなかった。
こうして荷物を送り出すまで8日間、そして送り出したあとの整理整頓にも時間がかかり、すっきり片付いた室内で過ごせたのは、なんと最後のたった2日。
いやはや、大仕事でしたわぁ。

私にとっては、いわばツアーコンダクターとヘルパーと家政婦と片付け屋と娘の任務を大鍋に入れてグルグルとかき混ぜるような日々。
共同作業をしていた姉との役割分担の確認業務も含めて四方八方に目配りしているつもりなんだけど、ときどき記憶が飛んで慌てたり、何かうっかり忘れていて支障が生じないか突発的な事故が起きないか父の健康状態や心のバランスが保てるかどうか気が気ではなく、心のやすまる暇がほとんどなかったような気がする。

とはいえ、透明感あふれる北国の空気と色とりどり花盛りの春に目も心も癒される瞬間もたびたびあったし、散策の折々にはカフェでソフトクリームやケーキも堪能できた。叔父が招いてくれた二度の晩餐では、北海道の珍味やお寿司やステーキもいただいちゃって、久しぶりに叔母や従姉妹とも会えて満ち足りた時を過ごさせてもらった。
振り返ればいろいろ大変ではあったけど、やっぱりキラキラ素敵なゴールデンウィーク♪だったのかも。

さて、第一のミッションである母の長距離移動ですが、これはこれでまた大変な大仕事だったのですが、それについては次回じっくりと振り返りたいと思います。ほとんど寝たきりの高齢者を介護タクシーと飛行機を乗り継いで移動させる。ほんと、たくさんの方々のご助力あってこそ実現できたとしみじみ感謝の念が湧いてきます。たぶん、さまざまな介護サービスが整備されていなかった20年前には実現できなかった。ほんと、ありがたい奇跡のような道程だったのです。

晴天の4月30日の中島公園は桜が満開で気持ちよかった〜!
中島公園の池の端
「はさみや」さんのサンドイッチでピクニック♪
近所の公園のベンチに座って上を向けば♪
円山公園の池?沼?が美しかった
終盤は八重桜がたわわに
ツンツンと芽を出していたホスタが終盤にはふさふさに
叔父の晩餐のメイン1、山わさび添え
叔父の晩餐のメイン2
大通り散策ついでに「きのとや」でコーヒーブレイク
父お気に入りの抹茶アイスぜんざい@山麓道路の「ミッシュハウス」
街で用事のあとにソフトクリームをば
近所のチョコレート店「リュミエール・エ・オンブル」のケーキ
父お気に入りのソフトクリーム@山麓道路の「カフェ・ヴァニラ」
札幌名物ではないけど、DEMELのバンブーも食べた♪
あれっ?と気づくと整理中のショールの箱に鎮座していたマリア
散乱する物のなかでもふかふかスペースを見つけるのが上手