Sさんと、できることを交換。「時間銀行」の始まりか!?

暮らしのDIY

いろいろ事情があって、ちょうど4年前の2018年2月、私はいま住んでいる所沢ニュータウンの家に引っ越してきた。半世紀近く前に父母が建てた家に、いわば出戻ったのでした。

この家は、私が大卒で就職したときに独立してからも家族が一人住みつづけてきたし、札幌を拠点とするようになった父母も十数年前まではちょくちょく訪れて外壁の塗り直し工事なんかを工務店さんに頼んでメンテナンスしていたので、築45年を過ぎてもボロボロというほどには傷んでいない。そもそも平坦な地に頑丈に建てられたおかげで、どこも傾むいていないし、窓や扉の開閉にも支障はきたしていない。いまも、断熱性が悪いこと以外は満足して暮らせている状態だ。
とはいえ、築半世紀近くを経た昭和のマイホーム感ただよう木造住宅には、ところどころにほころびが生じている。

そんなわけで、4年前に引っ越してきてから、私はリビングや寝室や書斎などに無垢の杉材を敷いたりトイレ壁にペンキを塗ったり外回りのフェンスにペンキを塗ったり書斎壁にペンキを塗ったり玄関扉にペンキを塗ったり和室に杉材を敷いたり……と、マイペースでDIYリフォームを進めてきた。
気になる箇所はまだまだあるのだが、まあ、ゆっくりゆっくり少しずつ。じゃないと身がもたない。あれをやっては筋肉痛、これをやっては筋肉痛、といった調子なもんで。笑

で、気になる箇所のなかでも、引っ越してきてからずっと悩んでいるのが天井の照明だ。
蛍光灯の明かりが、私はとても苦手なんです。疲れるんです。なのに、昭和のマイホームにはいたるところに蛍光灯がついている。だから、照明器具を替えたい。でも、電気工事は自分ではできない。ならば、電気屋さんに頼めばいい。見積もりをとって、工事してもらえばいい。ということは、わかっちゃいるの。でも、めんどくさい。というか、ワクワク感がない。気も腰も重くてアクションできない。そうしてグズグズしているうちに、なんと4年も経ってしまった。トホホ。

でも、グズグズしてるのは悪いことばかりではないんですねー。
というのも、昨年の秋頃、友人のSさんがSNSに投稿していたのですよ、自宅の天井の照明器具をDIYで替えた、と。
えー、えー、そんなこともできるんだ! Sさん、ソフトウェアの技術者なのに、電気工事士の資格を持ってるんだぁ、すごいな。しかもご自宅の元の照明器具、うちのソレとなんだか似てるみたい。

で、グズグズ派の私はその投稿を見てすぐじゃなく、数週間後にメッセージで尋ねてみたのだった。うちの蛍光灯を取り外し、電球やペンダントライトを付けられるローゼットに替えてもらえるか、と。

Sさんとは、以前私が仲間と三鷹市で運営していた会社で企画した広報関連の勉強会や木工ワークショップに、SNSつながりで参加してくれたのをきっかけに知り合った。聞けば、私の中学時代の同級生の高校時代の同級生(つまり、同じ学校に通ったことはない)だったり、所沢市在住だったり(当時は私は三鷹市在住だったが)というご縁があり、しかも引っ越してきてみれば、それぞれ犬の散歩中に航空公園でばったり会って比較的近い地域にお住まいだということも発覚した。……と振り返るに、実際に会ったことは数えるほどなのに、SNS時代の今、互いの日常のあれこれをタイムラインで垣間見ているだけに、会った回数のわりに距離が近く感じられるものですねぇ。

で、Sさんからさっそく、「新しく屋内配線を引かなくていい工事ならできると思いますよ。一度、見にうかがいましょうか?」と返信が届いた。わーい、うれしい、たのしそう♪

そして翌週、Sさんは自転車を漕いで来てくれて、ご自宅と同じようにまったく問題なく工事できると言ってくれたのでした。わーい、やった♪

当初は有料でお頼みするつもりだった。
ただ、ちょうどその頃、私はスペインで始まった「時間銀行」のことを『雇用なしで生きる』という本で読み、その試みにいたく共感していて、「時間」を交換単位としてサービスのやり取りをする仕組みを地域でできたらいいなぁとつらつらと考えていた(今も考えつづけてます)。
そこで、Sさんに「円でお支払いしてもいいけれど、何か私がSさんにできることで交換してもいいし、円と何かの組み合わせでも」と提案してみたところ、Sさんも「いいですよ、おもしろそう」と乗ってくれた。現職の契約の事情もあるようで、「むしろその方がいいかも」とも。

そして、電気工事との交換として、Sさんが書き綴っている「note」の文章の添削はどう?と提案してくれた。う〜ん、おもしろそう。編集者の私には得意分野のオファーは、まさに渡りに船。Sさんが文章を書いて公開しているのは知らなかったので、読ませてもらうのも楽しみだ。

……という成り行きで、所沢市の片隅で「時間銀行」のちっちゃな試みの第一歩が実現されました。
これまで、12月中に添削ひとつ、1月中に電気工事2箇所。
照明を替える予定の箇所は残り5箇所もあるので、それぞれの予定に合わせてゆっくりゆっくり進めていければと思ってます。

それにしても、「できることを交換する」って、すごくおもしろい。想像以上かも。
私はそもそも経済的な余裕があるわけではないので、基本的に倹約できるのはうれしい。だけど、それだけじゃない。作業のついでにお茶を飲みながらおしゃべりもできて、相手の考え方や感性も知ることができて、互いに信頼関係を深められる。もちろん、業者さんに頼むときでも会話はするし何かしらの交流や信頼関係も生まれるのだけれど、なんか違う。
もちろん、「それって、友達同士で手伝いあってるだけでしょ」って言われてしまえばそれまでなんだけど。でも、スペインで「時間銀行」を広めた立役者でもあるフリオ・ヒスペールさんの言う「もうひとつの経済」が念頭にあるから、その可能性にワクワクするのだ。Sさんもそれを「おもしろい」と感じて乗ってくれたのだし。

円という通貨を介在させずに、互いが求める役務を交換する。今回は二人の直接的なやりとりだが、人数が増えれば交換できる役務の種類が多くなって、信頼関係の輪も幾重にも広がるだろう。具体的な仕組みはまだわからないけれど、「一緒にやりたいな」という人とつながっていくことを想像するとワクワクするなぁ。

それに、やっぱり電球のあたたかな明かりはいい。なんだろう、すごくホッとする。しかも照明を点けるたびに、ふと思いが「もうひとつの経済」に飛んでいく。そんな夜のひとときが、とても好きだ。
Sさん、ありがとう!

私の部屋の旧照明
プラスチックカバーはすでにヒビ割れてました
ああ・・・天井にはずいぶんシミが
一つ一つ丁寧に作業するSさん
とりあえず私の大好きな丸電球のみ。
天井のシミが目立つので、さてどうするか?
しばらく(何年か?)グズグズするのだろうな、私。笑
Sさんは、自宅の照明交換をするために
電気工事士の資格を取ったとか。
すごいよね!