アベノマスクを忘れない|その7|なぜ平型マスクが採用されたのか?

気になること

それにしても、謎だ。
なぜ今の時代に、「給食マスク」とも揶揄された「平型マスク」が全国全戸に配布される布マスクとして採用されたのか、がである。

その1|でも引用したように、一般社団法人 日本衛生材料工業連合会の「マスクについて」のページによると、マスクの形状は、平型マスクプリーツマスク立体型マスクの3タイプに分類されていて、全戸配布されたアベノマスクは、昔ながらの「平型マスク」に属する。
また、用途によっては産業用医療用家庭用に分類され、全戸配布されたアベノマスクは「家庭用」に属する。

昨今の家庭用マスクの市場での割合は正確にはわからないが、近年は、圧倒的に不織布のプリーツマスクが主流になっていた。街で着用している人を見かける率からも、店頭に並ぶ商品の多さからも明らかだった。
上記の一般社団法人 日本衛生材料工業連合会のページで「家庭用マスクの構造」の図解として挙げられているのが不織布のプリーツマスクであることからも、一般的な家庭用マスクがそれであったことは間違いないだろう。

しかし新型コロナウイルスの感染拡大で需要が急激に増え、それが店頭から姿を消してしまうという事態になり、市場において圧倒的な劣勢に置かれていたガーゼ素材の平型マスクに白羽の矢が立ったのであるが、その必然性が私には全くわからない。
「原料の不織布が入手できない」「洗って何度も使える布がいい」という理由はわかるが、なぜ平型にしなければならなかったのか。それが私には、どうしても理解できないのだ。

だって、店頭でマスクが品薄になってくるにつれて手作りする人がたくさん現れて、私のFacebookのタイムラインを見るだけでも続々と色物・柄物の手作り布マスクの画像が流れてきた。「みんなすごいなー」「クリエイティビティ豊かだなー」と感心して眺めていた。それらに共通していたのは、プリーツマスク立体型マスクであるということだった。平型は皆無ではなかったけれど、立体的に使えるものがほとんどだった。

手芸用品販売大手ユザワヤのWebサイトのマスクの作り方動画公開!型紙も無料配布中!を見ると、3月の時点ですでにプリーツマスク立体型マスクの作り方が公開されていて、型紙も無料でダウンロードできるようになっていたことがわかる。

また、ファッション情報サイトFASIONSNAP.COMの4月12日の記事【マスクまとめ:買える編】ファッション企業が作るマスクの販売情報を見ると、すでに数々のファッション・アパレル関連企業がマスクの生産に乗り出していて、形も機能性もさまざまな布マスクが登場しつつあったことがわかる。その多様さに触れると、「さすが日本のモノづくりの底力!」と感嘆したくなる。もちろん、そこで取り上げられているマスクは全て、いうまでもなく、プリーツマスク立体型マスクである。

つまり、不織布の製品が手に入らないなら、プロも素人も、みんな布で作るのだ、プリーツマスクや立体型マスクを。

それはなぜか? 
その方が快適だから、である。

以前、マスクのプリーツが気になるをブログに書いたとき、U社のホームページのお問い合わせフォームから質問したことがあった。
そのとき届いた回答が、これだ。

装着時により立体的にフィットすることで、より快適なつけ心地となり機能的にも呼吸が楽に行え、装着したままでも会話がしやすいという利点がございます。

また、女性の場合、口紅やメイクがつきにくいという利点もございます。着用いただいた時に、より立体的にフィットするようにプリーツの向きが上半分と下半分が異なる構造になっております。

そうなのだ、立体的な形状のマスクには、息が楽にできて会話がしやすく口紅がつきにくいというメリットがあるのだ。

その快適性を知ってしまったら、誰だって平型マスクにはもう戻れないじゃないですか。だからプロも素人も、みんなプリーツマスク立体型マスクを布で作ることを自然に考え、行動に移したのである。

それなのに、である。
政府が全国全戸に一律配布するマスクとして選定したは、平型だったのである。

これはもう、時代錯誤も甚だしい選定としか言いようがない。
そしてニーズのギャップが大きすぎる。
計算機が必要とされているのにソロバン、パソコンの代わりにワープロ、扇風機が欲しいのに団扇、競泳用水着の代替にスクール水着、ジョギングシューズじゃなくてバレエシューズ上履き・・・みたいな。
懐かしいし悪いもんじゃないけど、「今は使えません」のレベルだと思いませんか?

いらない商品が、注文してもいないのに自宅に届く。
そういう悪徳商法を「送り付け詐欺」と呼ぶが、アベノマスクに関しては代金は直接は請求されないとはいえ、有無を言わさず税金が使われてしまって支払い拒否の選択肢は私たちに与えられていない。「送り付け詐欺」なら、支払い拒否ができるのに。
ひどい、ほんとうにひどいと私は思う。
あなたは、腹が立ちませんか?

しかも、マスク不足とアベノマスクの配布に便乗し、送りつけ詐欺が実際に多発していたのだから、笑えないことだらけである。

不織布マスクの不足に際して、数々のファッション・アパレル関連企業が生産に乗り出し、素人も手作り精神をすでに発揮していた4月1日、安倍首相は一住所あたり2枚ずつ布マスクを配布すると発表した。

あなたもぜひ、その発言を首相官邸のwebサイトの「新型コロナウイルス感染症対策本部(第25回)」であらためて確認していただきたい。
そこには、こう書かれているのである。

「来週決定する緊急経済対策に、この布マスクの買上げを盛り込むこととし、全国で5,000万余りの世帯全てを対象に、日本郵政の全住所配布のシステムを活用し、一住所あたり2枚ずつ配布することといたします。」

・・・つまり、アベノマスクは「緊急経済対策」だったのである。
そのことを、あなたは認識していましたか?
私は、ブログでこのシリーズを始めるためにあれこれ調べるまで、その認識が全くなく、感染症対策だとばかり思っていましたよ。

でも、「緊急経済対策」として布マスクを買上げることが目的だったのですよ。まさかまさかだが、この発言から読み取れるのは、そういうことである。

数々のファッション・アパレル関連企業が、事態の困難さにへこたれずに懸命にコロナ禍を商機と捉え、より良い商品による顧客満足を目指して切磋琢磨し、快適性、機能性、ファッション性の凌を削って高品質の布マスクを商品化している傍らで、時代錯誤も甚だしい平型マスクを、多額の税金を費やして買い上げる。
そのどこが緊急経済対策なのか。

日本のモノづくりの底力をこの機に世界に発信しようとするならいざ知らず、スーパーコンピューターの時代にソロバンを全戸配布するかのごとく、半世紀前にトレンドだった「給食マスク」を全国にバラ撒いて国際的にも失笑を買うことのどこが緊急経済対策なのだろう?
緊急経済対策として位置づけてみると、平型マスクが採用されたことの謎がますます深まる。

が、現政権の政策の多くは「お友達」にお金が回ることに重点をおいて考えられていることを思い出せば、謎でもなんでもないのかもしれない。
実は、平型マスクの選定理由も、単純明快なお金の話なのかもしれない。

というわけで、アベノマスクを巡る「お金の流れ」がとても気になる。
あなたも、気になりませんか?