アベノマスクを忘れない|その1|モノとして、それはどんなモノなのか?

気になること

『アベノマスク』とは、新型コロナウィルス感染予防対策として国が実施した事業で、全国全戸に配布された布マスクのことである。
みなさんもご存知と思うが、その必要性の有無をはじめ様々な紆余曲折が揶揄され、政策「アベノミクス」との語呂合わせにもなっているその名称が一般に定着した。

概要としては、2020年4月1日に安倍首相が「布マスク2枚の全戸配布」を表明したのがはじまりで、6月15日に菅官房長官が「今日中に配布が完了する見込み」と発表し、一応、事業としては終わったことになるのだろうか。

埼玉県所沢市に住む私の家には、6月5日に届いた。

文春オンラインの6月2日付けの記事によると、
厚生労働省のホームページで「布製マスクの都道府県別全戸配布状況」を見てみると、全国で6月1日時点で約53%、8日までに約75%とのこと(※推計値)。5月最終週に配布された家庭も多いようで、この間に届くところも一気に増えそうだ。
とある。

とすると私の家には、5月末までに約5割が配られて残りの半分の半分である25%が配られた6月1日から8日までのあいだに届いたことになる。早くはないが、ラストスパート期間としては前半のタイミングだったようだ。

あなたの手元には、いつ頃届きましたか?

郵便受けから取り出したところ

モノとして、アベノマスクを観察してみる

さて、届いたアベノマスクは、モノとしていかなるものなのか。
じっくり見てみることにしよう。

2枚の布マスクは、A4二つ折り、カラー印刷のパンフレット1枚とともに透明ビニール袋に入れられた状態で届いた。

入っていた布マスクは、2枚ともいたって清潔な状態に見える。すくなくとも目視では、異物混入はなさそうだ。

1枚ずつ透明ビニール袋に封入されている
袋から出してみても異物は見当たらなかった

厚みは、軽く押さえた状態で測って4mm程度。
断ち切り部分のある5枚は端から1.5cmほどに収められ、幾重にも折られて最終的には15枚重なっている。

パッと見ただけでは15枚も重なっているとはわからない

一般社団法人 日本衛生材料工業連合会の「マスクについて」のページによると、マスクの形状は、平型マスクプリーツマスク立体型マスクの3タイプに分類されている。全戸配布されたアベノマスクは、オーソドックスな「平型マスク」である。

大きさを測ってみると、縦9.5cm、横13.5cm。
ちなみに私が日頃使っている「5段プリーツマスク やや小さめ」は縦9cm、横15cm。縦はアベノマスクよりも0.5cm短めだが、プリーツを伸ばせば鼻をすっぽり覆えるほどに広がる。横はアベノマスクより1.5cm長い。

当初から言われていたが、アベノマスクは小さい。一般的な「やや小さめ」のサイズよりも小さいということが、実物を手にしてよくわかった。

サイズは小さい
プリーツマスクは鼻の突起を柔軟にカバーしてくれる

報道を通して「ガーゼマスク」と聞き知っていたとおり、見た目からも肌触りからも、それらしく思われる。
しかし、同梱されていたパンフレットには「布マスク」と表現されている以外は、素材が記されていない。というか、サイズ、産地、メーカーなどの基本情報がいっさい記されてないのである。

「商品」でなければ「適切な表示」は必要ないのだろうか。
だけど、何も記されていないと不安になる。とりわけマスクは、口に触れる衛生用品だもの。

例えば、私が買い置きしてあった不織布の5段プリーツマスクのパッケージにはどんな表示がされているのか、見てみよう。

パッケージの裏側

中央下部に、「(一社)日本衛生材料工業連合会自主基準による表示」があり、「本体・フィルター部」と「耳ひも部」の素材も、サイズも、包装材の材質も明記されている。

こうあるべき、という表示

そして右上には、「全国マスク工業会」に加盟している企業が製造・販売している、安心できるマスクの証しであるマークも、容器包装リサイクル法にもとづく「紙マーク・プラマーク」とともに印刷されている。

いわゆる任意マークだが信頼の証

・・・って、こうしてあらためて常識的な表示をクローズアップしてみると、アベノマスクの表示がいかに不十分であるかがわかる。

一般社団法人 日本アパレル・ファッション産業協会の「マスクの生産・販売等に関する諸注意」には、このように書かれている。
マスクは「家庭用品品質表示法」の繊維製品品質表示規定に指定された品目ではないので、印字されたラベルが取れないよう製品に付ける必要はありませんが、お客様の利便性を考え不安を解消するために、パッケージ等に印字するようお願いします。
なお、(一社)日本衛生材料工業連合会の自主基準では品名、対象、抗菌剤、原産国、入数、製造者・販売者の名称・住所および電話番号の付与を求めています。

上記を読むまでもなくわかることではあるが、「お客様の利便性を考え不安を解消するために」、品質表示は重要なのである。なのに、アベノマスクには品質表示がない。

文春オンラインの4月23日付けの記事によると、アベノマスクは、官邸官僚が「国民の不安はパッと消えますよ」と首相に発案したそうだ。
だけど異物混入や汚れの発覚という途中経過に加えて、いざ届いてみると安心を担保する品質表示がない。しかも多くの人が受け取った頃には、店頭でもマスクが買えるようになっていたという顛末からも、むしろ私は政府への不審を募らせた。

ちなみに、厚生労働省のホームページの「布マスクの全戸配布に関するQ&A」を見ると素材は綿100%(→ けど、ゴムは綿じゃないよね?)、産地は中国、ミャンマー、ベトナムメーカーは興和株式会社、伊藤忠商事、株式会社マツオカコーポレーション(あれれ?ほかにも疑惑の会社が出てきてたよね?)と示されている。
でも、わざわざインターネットで調べなくちゃわからないうえに情報が不十分って、あまりに不親切で不誠実だと思わずにはいられない。

「せめて『安心マーク』が付いていたらよかったのに」と思えてきたので、「全国マスク工業会」の登録各社のリストを見てみた。
厚生労働省が掲載していた3社のうち、興和株式会社の名はある。伊藤忠商事はないが伊藤忠リーテイルリンクは載っていて、伊藤忠商事100%株主の会社だから同じと見なされるのだろうか。しかし残る1社の株式会社マツオカコーポレーションの名は、リストにない。
とすると、安心マークを付けられる会社とそうじゃない会社の製品が混ざっているから、パンフレットにマークを記せなかったのかもしれない。ほんとのところ、どうなんでしょうね。

これが町内会のお祭りの土産程度のものなら問題にならないかもしれないけど、国が全国全戸に配布した一大事業なわけで、それでいいのか?と強い疑問が湧いてくる。
というわけで、私なりにアベノマスクの考察を続けていこうと思っている。このまま終わりにしていいわけがない。

第二段では、同梱されていたパンフレットをじっくり観察する予定です。