アベノマスクを忘れない|その2|同梱されていたパンフレットを読解してみる〜①表紙〜

気になること

てっきりアベノマスク事業は終了したものと思い、振り返りながら検証を試みようと『アベノマスクを忘れない』シリーズをスタートしてみたのだが、「その1」を書いた翌日の7月28日の夕方に「布マスク、今後さらに8千万枚を配布」のニュースが流れてきた。介護施設や保育所向けとのことだが、いやはや、まさかまさかの驚きだ。

「えっ!? まだやるの?」「 いいよ、もうやらなくて」「いらないのに」・・・と反応するのは私だけではないことは、SNSや報道を通してガンガン伝わってくる。

不評でも、やる。不要でも、やる。
意固地な裸の王様を諌める人はいないのか?
税金と資源と労力の無駄遣いをやめてほしいと、心から願う。

ともあれシリーズ「その2」は、予定どおり、アベノマスクに同梱されていたパンフレットに注目したい。

さて、あなたはこのパンフレットを、もうご覧になったでしょうか? 
えっ? パッケージを開けることなく寄付してしまった? 
ふむ、 ざっと見て置いてある? 
あらあら、捨ててしまった?
・・・対処は各自いろいろだと思いますが、これを機にじっくり見てみることにいたしましょう。

まずは表紙です。

メッセージ本文、三密のカコミ、補足情報という3段構えの表紙

冒頭、「みなさまへ」と書かれている。そしてメッセージがつづく。

文面は、いたって低姿勢だ。
三つある段落の文末を見るだけでわかる。
ご協力をいただいていることに、感謝申し上げます
マスクの着用をお願いいたします
十分な量でないことは承知しておりますが、(中略)ご活用ください」。

読んだ印象としては、「国民の不安がパッと消えるから配布しとけ」的な上から目線は、すくなくとも感じられないかな、と思う。

だけど、あれれ? 誰からのメッセージなんだか書いてないじゃないか。
「みなさま」と呼びかけているのは、いったい誰なのか。

ふつう、手紙でもeメールでも冒頭に「〜様」「〜へ」と宛名がきて、本文がつづき、最後に名前または肩書き&名前が入っていて、そのメッセージが誰からのものなのかわかるわけですよね。
なのに、このメッセージには、ソレがない。

……のかな? と目を泳がせると、あ、あった!

ココです。赤丸で囲ったところ

差出人は、本文の下にある白いカコミの「3つの密を避けましょう!」の下部に書かれていた。「厚生労働省医政局経済課(マスク等物資対策班)」。
その左には厚生労働省のロゴマーク、右には問い合わせ先「布マスクの全戸配布に関する電話相談窓口」も併記されている。

けど、どうなんでしょうね。
この白枠のカコミだけ切り取ってみると、まるで厚生労働省は「3密を避けましょう!」のお知らせを発しているだけのように見えませんか?
文字どおり白い線で「一線を画して」、あくまで「冒頭のメッセージを発しているのは厚生労働省ではないよ」と暗に伝えているようにすら見えてくる。

しかも、一度そんな風に見えてしまうと、あれ? これって何かに似てる・・・と思い浮かぶものがある。ほら、タダで配ってるティッシュみたい。

犬の予防接種済証を市役所に届けたときにもらったティッシュ

こういうケースでは、配布している側が見てほしいのは、同梱されている標語。ティッシュは「オマケ」だ。
それと同じく、厚生労働省として積極的に見てほしいのは「3つの密を避けましょう!」の標語で、マスクは「オマケ」。
そんな体裁に見えてきはしないかい?

ここまできて思い出すのは、「一住所2枚の布マスク配布」の事業の主導者がそもそも厚生労働省ではないことだ。
周知のように、最初に「やる」と表明したのは安倍総理だ。
首相官邸のwebサイトの4月1日「新型コロナウイルス感染症対策本部(第25回)」のページにもはっきりと以下の記載が見られる。

令和2年4月1日、安倍総理は、総理大臣官邸で第25回新型コロナウイルス感染症対策本部を開催しました。
会議では、新型コロナウイルス感染症への対応について議論が行われました。総理は、本日の議論を踏まえ、次のように述べました。

(中略)
本日は私も着けておりますが、この布マスクは使い捨てではなく、洗剤を使って洗うことで再利用可能であることから、急激に拡大しているマスク需要に対応する上で極めて有効であると考えております。
そして来月にかけて、更に1億枚を確保するめどが立ったことから、来週決定する緊急経済対策に、この布マスクの買上げを盛り込むこととし、全国で5,000万余りの世帯全てを対象に、日本郵政の全住所配布のシステムを活用し、一住所あたり2枚ずつ配布することといたします。

・・・そうなんだよね。
つまり、パンフレットのメッセージはどう考えても首相のものと考えるのが妥当だ。というか、それ以外に誰かいるだろうか? そもそも新型コロナウイルス感染症対策を所轄しているのは内閣総理大臣をトップとする内閣官房である。

ということは、ここで差出人として印字されている「厚生労働省医政局経済課(マスク等物資対策班)」は、あくまで単なる「物資対策班」=「マスクを手配して送る担当」ということなのだよね。
つまり、やはり一線を画している「物資対策班」は、メッセージの発信者ではないと言えるだろう。

ではなぜ、メッセージに署名がないのだろうか。
考えられる理由としては、
① 署名なしでも、国民は忖度できると厚労省の担当者が考えた
② 署名を入れる予定だったが、確認が取れなかったから外した
③ 署名を入れる予定だったが、首相または側近または上役から却下された
④ そもそも署名を入れるべきという常識に制作チームの誰も気づかなかった
・・・とかかな?
ほんとのところ、どうなんでしょうね。

意図せずしてか、意図してかはわからないが、メッセージに署名がない。そしてその不在が示すのは、どことなく曖昧な空気だ。
目を見ないで謝る、なんとなく知らんぷりする、心ここにあらずだけどやってる感は出す・・・そんな行為に面したときと共通する居心地の悪さを私は感じるが、あなたはどうでしょうか?

メッセージの文章はいたって低姿勢。だけどその実、慇懃無礼。そんな気すらしてくるのは、私だけでしょうか。

ということで、表紙について考察しただけで想定外に長くなってしまった。
残り3ページについては、次回以降に。この調子だと、パンフレットについてだけであと2回か3回になりそうな予感がする。A4二つ折りの薄いパンフだけど、思いの外、突っ込みどころ満載だ。