「家族に盗人呼ばわりしたことは口外するな」と父に言われたけど、やっぱり書いちゃうw

気になること

認知症の父は、一緒に暮らしている私と姉が父のお金や銀行通帳を盗んだとか、何かわからないけど私たちが悪さをしていると言い募ってくることがしばしばある。ネチッとした陰険な目つきで私たちをにらみつけたり、「お前だ!」と私たちに人差し指を突きつけて泥棒扱いしてくるのである。

このブログにもしばしば書いてきたので、これまでの数々のエピソードを読んでくださった方は、私が最初はひどく傷つけられてマジで泣いていたけれど、いろいろ本を読んだり経験者の話を聞きながら「まあ、認知症だから仕方ないか」とあきらめるようになり、いつの頃からか面白がりながらブログネタにするに至っていることをご存知かと思う。

で、今回も私は父から嫌疑をかけられた上に「口外するな」と釘を刺されもしたのでありますが、やっぱり書いちゃいますw

ことの発端は、母の施設移転だった。
前回のブログに書いたように、昨日、母は小規模多機能の施設から老人保健施設に移転した。認知症の父には、毎週末の母の在宅介護が私たち姉妹には負担が重すぎて老健の入所に切り替えたという事情がどうしても理解できない。だから父には最終的に「リハビリが充実しているから老人保健施設に移る」とシンプルにわかりやすく説明し
父もそれは母のためになることだといたく喜んで落ち着いたかに見えたのだったが、母を送り出した夜、「ほんとうにその病院でママは大丈夫なのか? 納得しているのか? K(←姉)の意見も聞いてみなくちゃならない」などと私に絡んできたのであった。

だからぁ、老人保健施設は病院じゃなくてぇ、ママは治るとか治らないとかの状態じゃなくってぇ、歩けるようになるとしたらパパが走れるようになるのと同じくらい奇跡的なことでぇ……って話はもう何度もしているので今回はあえてせず、「まぁ、様子を見てみようね」と切り上げ、「さてと、何か歌おうかぁ〜」とPCを操作して父の十八番の「琵琶湖周航の歌」のYouTubeをスタートしようとしたのだが、父はちっとも乗ってこずにクダクダ言いつづけるのであった。

で、ちょうどタイミングよく母から電話がかかってきたので、母に「パパがママのこと心配なんだって」と伝えると、「あら、ありがとう、心配してくれて」と明るい声で答えてくれたのだが、それがまた父の神経を逆撫でしたようで「お前はそんな呑気でいていいのか? 本家の相続だってあるはずなのに」とかなんとか存在しない本家?の話で母に絡んでいく。母が「パパの言うことは変よ、本家なんてないんだから気にしなければいいのよ」と呆れ声で応ずると、父はますます憤って「お前はそんなふうに言って、そんなことでいいと思うのか?」とワケのわからない繰言を続ける。「そんなふうに」とか「そんなこと」って何なんだ?

そこで私は準備していた「琵琶湖周航の歌」をオンにし、スマホの向こうの母にも「一緒に歌おう!」と声かけして二人で歌い始めた。むっつり黙ったまま不機嫌にしていた父も、やがて歌いはじめた。内心、「いいぞいいぞ、このまま機嫌が直るといいなぁ」と期待していたのだが、歌い終わって母との通話を切ると、「こんなことで気を逸らそうとしてもだめだぞ」とまた絡んでくるのでそれは無視して「じゃ、次は『紅萌ゆる(くれなゐもゆる)』かな」と、今度は父の母校の歌に移った。たいていはこれを聞くと意気揚々となる父なのだが、この日はダメだった。「俺はそんなふうに歌うのは嫌いだ」と怒りはじめるので、私もめんどくさくなって「わかった、消すわ」と動画を中断してPCをオフにしていると、父が私の脇ににじりよって言った。

「警察に行ってもいいのか、お前は?」

やれやれ、また始まった。
いい加減な気持ちになって私は、「どうぞ、いいわよ」。
すると父は「刑事事件になるぞ」と吹っかけてくる。
「刑事事件なんかそもそもないからどうでもいいわよ」と私。


絡むのをやめない父にしばらくクダクダ言わせてから、私は父にキッパリした口調で告げた。
「そうやって人を泥棒扱いにするのは、パパが認知症のせいだって私は知ってるから、歌ったり話を変えて気を逸らそうとしてるのよ。いい? もし、パパが私にご飯を食べさせたり着替えを手伝ったりお世話しているのに、私が『泥棒!』って言ったらどう思う?」と私は父に人差し指を突きつけた。
すると父は「怒る」と答えた。あら、真っ当な答えが返ってきたわ、ちょっと意外。


「そうだよね、怒るよね。私も怒りたいけど、パパと暮らしはじめてから認知症の本を10冊以上読んで、認知症はどんな病気か勉強して、『ものとられ妄想』が起きると人を泥棒扱いするって知ってるから仕方ないと思って我慢して気を逸らしてあげようとしてるんだよ」とピシャッと言葉を叩きつけ、「じゃ、私はお風呂掃除してくる」と言い残してその場を後にした。

お風呂掃除を終えて戻ると、「私は2階の洗面所で歯磨きしてくるから、パパは1階の洗面所で歯磨きしてね!」と有無を言わさぬ口調で指示をすると、普段は「あとでする」とか「そういうふうに言われるのは嫌だ」とゴネるのだが、このときは私の鼻息の荒さに気圧されたのだろう、「よし」とゆっくり立ち上がるとのそのそと洗面所に向かった。

歯磨きの後で戻ると父はすでにリビングに戻ってソファに座っていたので、少し気持ちを落ち着けて私も横に座ってみた。
すると父が私に言ったのである。

「家族から盗人呼ばわりされたというようなことは、口外するなよ」と。


思わず笑いそうになるのを必死で堪え、父の懇願の眼差しを正面から受けて「わかった、いいよ」と私は言い、左手の小指を差し出して「ゆびきりげんまん」をしたのであった。
たまには真っ向から正論を言ってみるのも悪くないのかもしれない。

が、まあね、ついつい暴力振るっちゃって虐待になるのもわかるなーって思ってしまうほど呆れ果てて疲れちゃった。ゆびきりまでしたけれど、約束は守ってらんないわ。父よ、許せ。