図書館の統計データを比較!これまで私が利用してきた5つの地域の違いを探る

気になること

とうとう今日4月10日から、私が住んでいる所沢市の図書館が閉じてしまう。

2020年4月7日、1都1府5県に対して新型コロナウイルスの緊急事態宣言が発令されたからだ。発令を受けて、当該県である埼玉県の所沢市にある図書館も10日から全館のサービスが停止されることになったのだ。
再開予定は5月中旬。それまで図書館に行くことはもちろん、インターネット予約もできなくなる。さびしい。私の生活の一部が失われる気さえする。グスん。
感染拡大が終息し、仕事も生活も図書館も復活する日がはやく訪れることを切に切に祈るばかりだ。

私は図書館が大好きで、幼い頃からこれまで大いに活用させてもらってきた。
引っ越しも大好きなので、振り返ると、あちこちの地域のさまざまな図書館の風景とともに数々の本との出会いが感慨深く思い出されてくる。

とりわけ2006年から2008年にかけては、『井の頭公園*まるごとガイドブック』の企画・編集・執筆を進めていたので、当時住んでいた三鷹市と隣の武蔵野市の複数の図書館をハシゴしながらしげしげと通っていた。
この時期には両市の図書館で、地域や歴史の資料を貸出限度いっぱい10冊ずつ常に借り、閲覧室も頻繁に利用していた。
私の人生のなかで、最もヘビーユーザーだった時代である。

2年前、三鷹市から埼玉県所沢市に引っ越してきた。
当初は、図書館ロスになりそうなくらい三鷹が恋しくて仕方がなかった。
というのも、私が住んでいた三鷹市牟礼5丁目は、図書館天国地帯だったからだ。徒歩5分ほどに地域図書館が1館、徒歩10分ほどに地域図書室が1室、そして自転車15分圏内に本館と武蔵野市の吉祥寺図書館もあり、自転車30分圏内には武蔵野市の中央図書館も武蔵野プレイスもあった。探している資料の種類やそのときの気分によって、めざす図書館がよりどりみどり選べたのだ。

ところが引っ越してきた所沢市中新井は、一番近い本館まで自転車で20分。徒歩なら35分〜40分ほどかかる。1980年完成の建物は古めで、郷土資料コーナーと閲覧スペースが狭くて私にとっては居心地が良いとはいえず、借りたい本をインターネットで予約してピックアップに寄るだけのことが多く、滞在時間は以前と比較にならないくらい短くなってしまった。自転車で20〜40分圏内に他にも地域図書館2館があるとはいえ、例えば武蔵野プレイス札幌市図書・情報館のようにわざわざ足を伸ばすほど特徴的な個性があるわけではなく、本館メインで借りる&返すのがほとんどだ。とはいえ、いまも図書館は私の生活の大きな一部を占める大切な存在だ。

そんなこんなの経験を頭のなかでたどるうちに、客観的な数字で図書館事情を比べてみようと思いたった。そしてインターネットで図書館要覧のデータを調べてみたらなかなか面白く、他の地域はどうなんだろう?と興味が広がった。

というわけで、私が現在住んでいる所沢市と、三鷹市・武蔵野市、そして以前住んでいた世田谷区、加えて両親の介護で昨年来ちょくちょく出かけている札幌市の図書館データも取り出して比較し、見える化してみた。

面積や人口をふまえて図書館事情を比べてみると…

図書館の実数は、所沢市8館、三鷹市7館、武蔵野市3館、世田谷区16館、札幌市47館。
単純に数でみると札幌市がダントツに多いが、面積も圧倒的に広い。単に数だけで、多寡を判断することはできない。

そこでまず、10㎢あたりいくつの図書館があるか計算してみた。
(面積、人口、図書館のさまざまなデータは、末尾に掲載)

すると、所沢市は10㎢あたり1.11館、三鷹市は4.26館、武蔵野市は2.73館、世田谷区は2.76館、札幌市は0.42館という結果が出た。
インフォグラフィックにしてみると、こんな感じだ。

こうして見ると、10㎢あたり4.26館の三鷹市が、図書館密度がダントツに高いことが一目瞭然だ。以前の自宅から徒歩10分圏内に2館もあったのは、たまたまロケーションが良かったというだけではなく、密度が高かったからなのだな。ふむ、納得だ。
そしてやはり所沢市は、私が住んだことのある都内の3市区より、圧倒的に図書館密度が低いことも一目でわかる。うーむ、くやしい。翔んで埼玉、もっと図書館を増やそうぜ!


次に、人口を図書館数で割って、1館あたりの人口をグラフにしてみた。

こうして並べると、三鷹市の1館あたりの人口がダントツに少ないのが目立つ。この5市区のなかで人口が2番目に少ないのに、図書館数が一番多いという事情ゆえの結果である。

そして先の「10㎢あたりの図書館数」では、所沢市1.11館:札幌市0.42館と倍以上の差がついていた2市だが、「1館あたりの人口」はほぼ同じ。
ちょっと意外に思われたが、これは面積の圧倒的な違いによる。なにしろ、札幌市の面積は所沢市の15.6倍。札幌ではより広範囲の人たちが1館を利用しているのである。


さて今度は、各市区の蔵書総数を人口で割って、1人あたり何冊になるか計算してみた。
こちらもインフォグラフィックにしてみた。

一目で、武蔵野市の「1人あたりの蔵書数」がダントツに多いことがわかる。

武蔵野市は、図書館数では5市区のなかでは一番少ない3館なのに、蔵書総数はトップ。
思えば、中央図書館以外の2館も規模が大きい。それぞれが多くの蔵書を擁しているのだろう。
『井の頭公園*まるごとガイドブック』の制作中、三鷹市立図書館本館では赤字の「館内」シールが貼られていて借りられない資料も、武蔵野市立中央図書館では普通に貸出していて、ものすごくありがたかったことを思い出す。おそらく館内用と貸出用にダブル以上に所蔵している資料も少なくないのだろう。あらためて、拍手を送りたくなる蔵書数だ。ブラボー!

実は、この5市区で蔵書総数のトップは世田谷区なのだが、いかんせん人口が多い。それで1人あたりの蔵書数は少なめになる。2番目に蔵書総数が多い札幌市は、もっと人口が多いから、一人当たりにするともっと少なくなるという結果である。


次に、図書資料等購入費を人口で割り、一人あたりの金額を出してみた。
こちらは、金額が資料に出ていた3市のみの比較。

ふーむ、これはまた違いが歴然。「ここまで違うのかー」と、ちょっとびっくり。

実は、所沢市に住むようになってから「図書館ロスになりそうなくらい三鷹が恋しくて仕方がなかった」と冒頭に書いたが、その理由のひとつに、「予約待ち」が長いこともあった。新聞の書評などで取り上げられた本をインターネット予約しようとすると、「待ち」の人数が多くてイラっとすることが多いのだ。人数が多いから必然的に待ち時間も長くなる。
当初は、イラっとするたびに同じ本の予約数を調べて比較していたのだが、購入冊数が三鷹は複数なのに、所沢市は一冊だけというケースがしばしば見受けられた。この予算の違いを見れば、納得である。やれやれ。払っている市民税が同じ比率なら我慢もしようが、そうでなければ要望書でも提出しなければなるまい。


その他にも、データを見ているといろいろなことに気づけて面白かった。
要覧を比較すると、サービスにも差があることがわかる。例えば、所沢市には予約本のコンビニ受け取りサービスがあったり、札幌市には高齢者・障害者向けに郵送サービスがあったり。読み聞かせや映画会などの催しも、地域それぞれの工夫に違いがありそうだ。あらためて比較してみたいと思う。

今回、私が元にした統計データは、各市区のwebサイトに掲載されている最新の2019年または2018年の「図書館要覧」「図書館事業概要」など。そこから基本的な数字を取り出し、面積や人口のデータと合わせて計算した。それを元に以下の表にまとめ、このブログのインフォグラフィックとグラフのネタにした。ご参考まで。