所沢市の東南、志木市との市境の近く、南側の柳瀬川の対岸は東京都清瀬市。そんな位置にある『滝の城址公園』は、中世の城跡で、一番高い場所にある本丸跡には城山神社がたっています。
境内の南側は、柳瀬川に向かって20メートルほどの急な崖。
その縁から望めば、戦国時代に城となった地の利がスカっと体感できる壮観です。
この崖からは、7世紀頃の横穴墓群が1976年に発掘されていて、古くからの要所だったことがわかります。
滝の城址は東西350m、南北200mに広がり、面積およそ6,300㎡。
土地の高低に沿ってくねくねと散歩道と階段が整備されていて、ところどころに「本丸虎口」「二の丸」「三の丸(茶呑み廓)」などの標識や解説板も設置されています。
空堀の跡をたどりつつ、かつての城の様子を想像しながらゆっくり散策しても小一時間。くたびれることなく楽しめる、ほどよい広さです。
「下から攻めてくる敵に矢を放ったりしたこともあるのかなぁ…?」などと想像すると、大昔の亡霊が出てきそうでちょっと怖くなります。ここで血を流すほどの戦いがあったのか? どうなのでしょうか。
後日、城の模型を見に所沢市生涯学習センターを訪れて解説をみると、
「天正18年(1590)に豊臣秀吉の小田原攻めの際、浅野長政勢に北面から攻撃され、1日で落城したといわれています。」
と書かれていました。
公園の「四脚門跡」の解説には、「落城に伴う火災のため消失しています」。
敵が火を放ったのか? それとも占領されるくらいならと自ら焼き払ったのか? いずれにしても、そのとき城はなくなってしまったわけですが…。
さて、どんなドラマが繰り広げられた落城の1日だったのでしょうか。想像すると、ドキドキしてきます。
この滝の城は北条氏照の拠点で、滝山城(八王子市)の支城だったといわれます。それを知ったとき、私にはちょっと意外でした。
というのも、つい、今の公共交通の便で位置関係を捉えてしまうクセがあるからです。
なにしろ、滝の城址の最寄駅はJR武蔵野線の東所沢駅。
そして滝山城址はJR中央線・京王線の八王子駅からバス。
乗り換えが複雑で、私の頭のなかではシンプルにつながらなかったわけです。笑
でも地図で俯瞰すれば、いうまでもなく、なるほどです。
滝の城から滝山城は、ほぼ南西方向にまっすぐ25kmほどの距離(歩いても5時間半くらいとgoogleさんは教えてくれる笑)。
15世紀末に扇谷上杉氏から小田原城を奪取し、そこから南武蔵へも勢力を広げ、多摩一円の有力豪族だった大石氏をも取り込んで支配を拡大していった北条氏にとって、そもそも大石氏がすでに内郭を築いていた滝の城を支城にするのは当然の成り行きだったことでしょう。
八王子市にある滝山城址は、多摩川に沿った崖上に位置し、都立滝山公園として整備され、春には「千本桜」が咲きみだれる見事な名所として知られています。こちらも空堀、本丸、二の丸、三の丸などをめぐって散策が楽しめる興味深い城址です。
ただ、面積は320,952㎡と広くて、以前訪れたとき私には全体像を想像するのが難しかったです。それと比べると滝の城は、5分の1程度の6,300㎡。さくっと歩いて位置関係が把握できました。
同時代の大小の城址、比べてみるのもおすすめです。
今回、滝の城址を訪れたのは2020年3月21日(日)。最高気温が20℃を超えたポカポカ陽気の週末でした。
新型コロナウィルス感染予防に配慮して、公共交通を使わずに行けて、あまり混んでなさそうな場所かな?と予想して行き先選びをしたのですが、大当たり。城址を散策していた小一時間のあいだにすれちがった人は5人ほど。崖を下って行ったスポーツ施設の公園や柳瀬川の川べりにはもっと人はいましたが、混んでいるというほどのことではありませんでした。
帰路は、すこし遠回りでしたが、東川沿いの道を選びました。
東所沢の駅からほど近くの川沿いでは、7月にオープン予定の『ところざわサクラタウン』の建設工事が進んでいました。クールジャパンの拠点としてKADOKAWAがプロデュースする「コンテンツモール」。さて、どんな文化の潮流が生まれてくるでしょうか。
そして川べりにず〜っと桜が植えられている東川。
この日はまだ2分咲きくらいでしたが、飽きませんでした。いやはや、これほどいたるところに桜を植えてしまう日本人は、桜狂いとしか呼びようがありません。笑
所沢市中新井の自宅から、滝の城址まで片道約6〜7km。
ゆっくり自転車を走らせながら、道中は畑や雑木林の風景、そして川べりの桜まで楽しめたうえに、ほどよい運動にもなりました。
新型コロナウィルスの感染を避けるために、物理的には人と距離をとる日々がしばらく続きそうです。
私はともかくstay home, stay safeを基本に過ごす予定でいますが、お天気のよい日には、また、あまり人が集まらなそうな地元の地味なプチ名所めぐりを楽しみたいと思っています。