市川房枝記念会女性と政治センター主催の『国の第4次男女共同参画基本計画と2020(令和2)年度予算案について聞く会』を勝手にレポート

気になること

2020年2月25日(火)に新宿の『婦選会館』に行ってきた。
ここに行くのは今回が初めてで、この会館の中に『市川房枝記念展示室』があることもお恥ずかしながら初めて知ったのだが、今回は展示を見に行ったのではなく市川房枝記念会女性と政治センター主催の『国の第4次男女共同参画基本計画と2020(令和2)年度予算案について聞く会』という催しが訪問の目的だった。

朝10時30分から12時過ぎまで内閣府と外務省の説明を聞き、昼食休憩のあと13時から16時40分まで厚生労働省、農林水産省、経済産業省、文部科学省の説明をひたすら聞くという、なかなかに濃密かつ忍耐を要するプログラムである。
会場をあとにする頃には、肩も脳ミソもコリコリに凝ってしまった感と、そうはいってもよくわからなかった感に打ちひしがれはしたものの、私なりに視野を広げることのできた有意義な1日だった。

この分野が専門というわけではないフリーランスの編集者の私が、このような歯が立たなそうな硬い催しにあえて行ってみようと思い立ったのは、昨年2019年末に世界経済フォーラムが発表した「ジェンダーギャップ指数」のランキングで日本が153カ国中121位、G7で最下位という惨憺たる結果だったことや、昨今の医大入試での女性差別の発覚やさまざまな職場での不平等や性的嫌がらせにまつわる多くのニュースや、決定権のある地位にいる女性が少ない現状や貧困格差の構造的な問題に触れるにつけ、「いったいどうして私が暮らしている日本は女性にとってこんなに残念きわまりない国なのか?」という疑問がむくむくと大きく膨らみつづけているからだ。そして直接的には、この分野の仕事に長年携わってきた姉が、この催しを教えてくれて背中を押してくれたからでもあった。

よくわかった「基本のキ」と、よくわからなかった「現実と予算の実態」

この会に参加して私がよく理解できたことは、おそらく「そんなこと、あたりまえでしょ」とおっしゃる方も多いと思われるであろう「基本のキ」だった。

「基本のキ」というのは、「男女共同参画社会基本法」が1999年に成立し、そこで定められているとおり5年ごとに「基本計画」が立てられ、その計画を遂行するために毎年各府省で予算案がつくられ、予算がつき、その予算であれこれが実行されているという仕組みと流れである。私が昨年、消費生活アドバイザー資格試験をめざして一所懸命に勉強した「消費者基本法」と同じく、政策を実現するための手順や日程などの規定も含むプログラム法と呼ばれる枠組みの法律のひとつであることがよくわかった。

しかし仕組みは理解できたにもかかわらず、先日の所沢市議会政策討論会『女性が社会進出をするために〜女性の声をもっと政治に!〜』で元内閣府男女共同参画室長の名取はにわさんの基調講演を聞いたときに感じたことと同じだが、法律ができて21年も経っていて、5年毎に計画を立てて進めてきたにもかかわらず「この惨憺たる現状って何?」という憤りをふくんだ疑問がさらに膨らんだ。
計画を立てる以上、PDCA(Plan→Do→Check→Action)を回しているはずなのだが、DCPが機能していないのか、的外れなPが作成されつづけているのか、よほど大きな逆行する波に前進を阻まれているのか、実際どうなのだろうか。もっと俯瞰してみないとわからない。というか門外漢の私が各府省の予算案をざっと聴いただけでわかるはずもないのは当たり前……トホホ。これから時間があるときに調べたり勉強したりしていこうと思う。まあ、一筋縄ではいかないと覚悟しましょう。

ひとつ、印象に残ったのは第4次基本計画の「施策の基本的方向と具体的な取組」で示されている4つの「政策領域」の順番が、毎年作成される「女性活躍加速のための重点方針2019」でのそれとは異なっていることだ。
前者では
「Ⅰ あらゆる分野における女性の活躍」
「Ⅱ 安全・安心な暮らしの実現」
「Ⅲ 男女共同参画社会の実現に向けた基盤の整備」
「Ⅳ 推進体制の整備・強化」
となっているのが、後者では
「Ⅰ 安全・安心な暮らしの実現」
「Ⅱ あらゆる分野における女性の活躍」
「Ⅲ 男女共同参画社会の実現に向けた基盤の整備」
の順になっていて、「Ⅰ」と「Ⅱ」が逆になっているのだ(「Ⅳ 推進体制の整備・強化」については示されておらず、その理由はわからないがひとまず横に置いておく)。
内閣府男女共同参画局の説明によると、このような順番変更がされたのは野田聖子氏が女性活躍担当大臣だったときだそうである。順番変更の理由は、「活躍」以前に「安全・安心」が必要だから。現実に沿っての判断と思われるが、当時どんな議論があっての変更だったのだろうか。

そして各領域の予算を「男女共同参画局予算のポイント」なる資料で見てみると、「Ⅰ 安全・安心な暮らしの実現」に対応するのであろう「女性に対するあらゆる暴力の根絶」(書類によって項目名が違うのはいかがなものか?という疑問は横に置いておく)への予算が合計5億3400万円。「Ⅱ あらゆる分野における女性の活躍」(こちらは同じ項目名になっている)への予算が合計2億4700万円。「Ⅰ」への予算が「Ⅱ 」の倍以上になっている。ふむ。
ざっと内容を挙げておくと、「Ⅰ 女性に対するあらゆる暴力の根絶」に関わるものとしては、
・DV被害者等セーフティネット強化支援パイロット事業(新規)
・性犯罪・性暴力被害者支援のための交付金(拡充)
・女性に対する暴力被害者のための官官・官民連携促進事業
など。
「Ⅱ あらゆる分野における女性の活躍」に関わるものとしては、
・様々な分野での参画拡大(政策・方針決定過程への女性参画状況調査、政治分野における女性の参画拡大に関わる調査研究、地方公共団体の取組支援等)
・地域における女性活躍
・国際的な取組の推進
など。
「Ⅰ」は現場での取組みへの支援が多く、「Ⅱ 」は調査研究が多い印象だ。
その内容と配分が妥当なのかどうかは今の私にはまったく見当がつかないのだが、男女共同参画局の全体予算が10億円を超えたのは今回が初めてとのことであった。

……以上のように「基本のキ」および内閣府男女共同参画局が進めていることはなんとなくザクッと把握できたのだが、それでは各府省の予算案についてはどうかといえば、説明を聞きながら資料にある文字と数字を一応はざっと目で追ったが、それを元に自分で考えて言語化できるよう消化するには時間がかかりそうなので、今日はここまでにしておくことにする。

なかなか消化できない理由は、いくつもある。そもそも私は国の予算規模の数字を見ることに慣れていない。そして男女共同参画を推進するための重要ポイントが頭の中で整理できていないし、これまでの予算規模の推移や項目ごとの割合の変化なども知らないから今回の予算の意味も読み取れない。また、縦割り行政で重なる領域の分担がどうなっているのかなど、当日の配布資料を見ただけではわからないことも多い。「これも男女共同参画推進事業なの?」と首をかしげてしまう内容が資料に含まれているケースも少なくなかった(特に文部科学省)。しかも配布資料によって単位が「百万円」だったり「千円」だったりするので頭が混乱させられる(グラフ化すれば理解が進むかも……とも思うが、そのくらいのことは男女共同参画局あたりがやっているのかな。調べてみなくちゃ)。
いずれにしても四方八方が未知の世界だ。まずは私なりに今回の「予算案を聞く会」でわからなかったこと&気になったことを足がかりにして調べていこうと思う。折々にブログでレポートしていきます。

今回の「予算案を聞く会」に参加してみての雑感としては、会場に集まった5〜60人ほどの参加者は、見た感じ私よりも年上のお姉様たちが多かった。それぞれの府省の説明に対しての彼女らの質問から、教育分野や政治分野などでの長年の地道な活動経験を踏まえた知恵と要望が豊富にあることが感じ取れて、多々勉強になった。
そしてこのような「予算案を聞く会」を催せるのは、市川房枝記念会女性と政治センターの長年の地道で丁寧な活動あってこそだとも深く感じ、敬意に頭が下がる。市川房枝さんの足跡も学んでいこうと思います。