高齢の父母のこれからの身の振り方について

気になること

82歳の母は、大腿骨の骨折で入院してからすでに8ヶ月。
母の入院を機に、91歳の父を札幌から私たち姉妹が暮らす所沢に慌ただしく連れてきて8ヶ月。
2人はもう、自分たちの身の振り方を自分自身で主体的に考えることが全くできない状態にある。

「こうなる前に、老い先をしっかり想像して準備しておいてくれればよかったのに」と、これまで腹立たしく感じたことが何度もあった。
「私たちのライフスタイルならこんな施設がいい」「私たちの経済状態ならこんな施設に入れそう」などと微に入り細に入りきちんと下見したり吟味したりして、ついでに入居を判断するタイミングまで熟考して、「そのときは、これこれをよろしく」と前もって私たちに言っておいてくれてたら、どんなに楽だったろうか。

だけど現実は、すべて丸投げ。

父は、一昨年の夏以降、認知症が顕著に進んでいる。まだ見守りがあれば、デイサービスを利用しながら自宅で暮らせているが、この先、同居が厳しくなることも予想される。とはいえ今すぐ施設に入ったらあっというまに認知症が進んでしまいそうだし、デイサービスのおかげで私たちの負担は抑えられているので、今しばらくは一緒に暮らして手助けしていこうと思ってはいるのだが、施設については、かねてから父は見学すら完全拒否で、いまも制度についての説明にすら耳を貸そうとせず、「俺は施設など入らん」の一点張り。想像力の欠如が甚だしいうえに、ボケているから仕方ない。こうなると、あきらめが肝心。判断は、もう私たちに委ねられていると思うしかない。

母は、数年前に私たち姉妹が提案して施設を一度見学はしたが、「できるだけパパと家で暮らしたい」と繰り返すばかりだった。思えば、すでに主体的に考えたり判断したりはできなくなっていたのだろう。70歳のときに脳梗塞で半身不随になり、年とともに不自由度が重くなるなか、一昨年の熱中症による入院でさらに身体が効かなくなり、たたみかけるように昨夏に転倒して大腿骨を骨折して入院……まさに坂道を転げ落ちるような展開。現在はほとんど寝たきりで要介護4の認定が出ていて、入院中の病院の医師からは「24時間の介護体制が整った施設への入居を勧める」と言われている。今となっては、母は「あなたたちにお願いするわ。よろしくね」と主体的に考えたり判断することを完全に放棄している。ある意味、潔い。父のように的外れな主張をしないだけ、私たちとしてはやりやすいと言えなくもない。

姿勢は違っても二人とも丸投げ態勢なので、私たちが調べたり考えたりして、もちろん父母の気持ちを確かめたり想像したりして、さらに自分たちがどこまで動けるかも話し合ったりしながら、父母のこれからを判断し、段取りや手続きや具体的なアクションを起こさなければならないという現状。
なかなか重荷です。ふぅ。

父と暮らすようになって8ヶ月。介護の日常の大変さが身にしみているだけに、寝たきりの母まで自宅で引き受けるのは手に余ることは容易に想像がつく。
だけど、コロナ禍で面会が全くできないという状況がつづき、母が札幌・父が所沢と離れ離れでいるうちにどちらかが先に逝ってしまうような展開は避けたい。
というわけで、札幌で入院している母を、所沢の自宅近くにある施設に連れてくる計画を立てている。複数の施設に説明を聞きにいったり近所の人に評判を聞いたりしたうえで、父母が丸投げ態勢である以上、私たち姉妹の動きやすさを最優先して徒歩圏内にある施設を選ぶことにした。幸い、ご近所さんの口コミ情報ではなかなか好印象なのでちょっと安心。

まずは母が近所の老人保健施設でリハビリしている間に、次に入居する特別養護老人ホームの目処がつけばありがたい。すでに入居申請を済ませ、できれば5月中旬に移動が決行できるよう老健さんに日程調整をお願いし、一歩一歩計画を進めている。

うまくいけば、母が入居している施設に毎週でも隔週でもいいから父がショートステイすれば、二人のランデヴーも実現できるという算段で、その間、私たちは父から解放されてのびのび休めるというナイスなプランを夢見ているのだが、それはひとえに新型コロナ感染症の収束にかかっている。母を近くに連れてきておけば、完全収束はかなわなくても、予防対策がゆるめられる機会をとらえて実現できるかもしれない。期待しているが、こればかりは祈るしかない。

というわけで、大仕事を控えているようで落ち着かない。
あちらやこちらとの連絡にぬかりはないか、物理的な準備はどうしたらいいか、考えたりシミュレーションしたり相談したり確認したり。そのうえ、的外れな質問ばかりしてくる父をいなしたりかわしたりもしなければならない。やれやれ。

母をこちらに連れてきたら終わりというわけではないけれど、まずは無事に二人が再会できれば、娘としては第一のミッションは遂行できたと思いたい。そのときは、自分たちをねぎらってのんびり一休みしよう。

さて、自分へのご褒美は何にしましょうかね、ってことも考えないと、ほんと、やってらんないわ。

3月27日、父の車いすを押して東川までお花見に