高齢の父母は、遠方にいる。
バスと電車を乗り継いで飛行機で飛び、再び電車とバスを乗り継いでドア・ツー・ドアで7時間ほどかかる。
だから、ちょっと気になるからといって、すぐに駆けつけることはできない。
日々、父母に電話したり、ケアマネさんやヘルパーさんと連絡したり、姉妹と相談したり確認したり、ときどきは予定調整して父母の家に滞在したりしながら、できる限りのことはやっているつもりだけれど、「もっとできることがあるかも?」「ほかにもやり方はある?」と、なんとなく落ち着かない気持ちになりがちだ。
太田差惠子著『遠距離介護で自滅しない選択』(日本経済新聞社2019年12月)は、そんな私の落ち着かない気持ちを、「まあまあ、こんな風に考えてみたら?」「こうしてみたら?」となだめてくれた。
内容は、6章立て。
1章:同居しなくても介護できる? 8人のケースより
2章:離れて暮らし続ける「心構え」
3章:「自分の暮らし」を守り抜くコツ
4章: 遠距離介護にかかるお金は「親の懐」から
5章:賢く「施設」を利用する
6章: 「最期」の向き合い方
1章に登場する8人のケースが、2章以後のケース・スタディとして取り上げられ、著者がアドバイスするという構成になっている。
介護制度の仕組みと利用方法、家族やケアマネさんとの関係性のつむぎ方、お金の管理の仕方など、具体的に参考になることも多々織り込まれていて勉強になった。そして終始貫かれている「自分を大切にしましょうね」というメッセージに、心をやわらかくしてもらった。
読んでいるうちに、私は「もっとやるべきじゃないか?」という義務感のようなものに急かされていたことにも気づかされた。
各ケース・スタディの最後に添えられた「自滅する人」と「自分の人生を大切にする人」の違いを示す簡潔な言葉には、「そうか、そうか、そうだよね」と幾度もうなずかされた。
例えば、
自滅する人▷▷▷気がかりなことがあるたび、自分が「行かなきゃ」と考える
自分の人生を大切にする人▷▷▷家族の代わりに見守ってくれる商品やサービスを探す
自滅する人▷▷▷きょうだい協力しあい、最大限の親の幸せを目指したい!
自分の人生を大切にする人▷▷▷きょうだい協力しあい、そこそこの親の幸せを目指したい!
自滅する人▷▷▷いつとはなしに、親のことでハラハラドキドキ
自分の人生を大切にする人▷▷▷ハラハラドキドキしなくても済むように工夫
自滅する人▷▷▷帰省するときは、親のためのみに時間を費やす
自分の人生を大切にする人▷▷▷帰省するときは、「遊び」時間を確保する
などなど。
なんとなく不安になったり、拠り所が欲しくなったときには、また手に取ろうと思う。
遠距離ではなくても、介護中の方々にお勧めです。無理しすぎない心構えと方法を教えてくれます。