ヨハン・ガルトゥング著『日本人のための平和論』を読んで、マインドセットが変わった

気になること

ヨハン・ガルトゥング著『日本人のための平和論』(ダイヤモンド社/2017年)を読んだ。

愕然とした。
これまで私は「平和」について、じっくりと考えたことがなかったことに気がついて。

読みながら、「こんな風に考えることができるなんて!」と、じわじわと感動した。

かねがね私は、この世が平和であることを願ってきた。
この世から戦争がなくなることを心から願ってきた。
だけど、こんなふうに「消極的平和」と「積極的平和」を定義づけて考えたことはなかったし、それを意識して行動したこともなかった。

東の大国・ロシアを恐れるノルウェー人の心理と、西の大国・中国を恐れる日本人の心理の共通点も、この本を読んで初めて知った。いずれも大国が自国を攻撃したことはなく、逆に、かつて自国がその大国を侵略したことがあるという過去を持つ。だから「彼らは報復を計画しているに違いない、ゆえに彼らは危険だ」という恐れを抱いてしまうのだとガルトゥング氏は示す。
読みながら、「思い込み」のウロコが目からボロボロと落ちた。

私はこれからは「隣国を恐れる心理」を踏まえたうえで、素直な眼差しでニュースに触れようと思う。「尖閣諸島をめぐって中国が攻めてくる」「竹島をめぐって韓国が攻めてくる」「北朝鮮がミサイルを発射して日本を攻めてくる」といったニュアンスで演出された報道に触れても、疑心暗鬼にならない私になろう。長い歴史が教えてくれる「事実」を知り、広い目で国際的な事象を見ることができるよう、心がけていこう。

そして言葉の印象操作にも、もっともっと敏感でいようと思う。
例えば、「集団的自衛権」の「自衛」は「日本の自衛」ではなく米国の「攻撃」にすり替えられるものであり、「集団的自衛権」とは「米国による他国攻撃に参加する権利」だということ。
「積極的平和」はガルトゥング氏が1958年から使い始めた用語で、「対米追従の姿勢」として政府が使うのは悪意のある言い換えだといういうこと。
きっちりと心に刻み込んでおこう。

私はこの本の存在を、筑摩書房の『ちくまweb』の斎藤美奈子さんのコラム『世の中ラボ 【第107回】日本の政治を考え直す海外発の本』で知った。ありがとうございます、斎藤美奈子さん。

読んでほんとうに良かった。
まだ読んでいない人は、ぜひ手にとってもらいたいと思う。
読めば、意識が変わる。
一人ひとりのマインドセットが変われば、きっと社会は変わっていくと信じたい。

ガルトゥング氏は1951年、21歳のときに「戦争研究はあるのに平和研究が存在しない」ことに気づき、体系的に平和を研究することを目指したという。
すごいと思ったのは、社会学的な平和研究のベースに、数学の統計学と代数の考え方をもとにしたということだ。

数学では、7マイナス5なら問題なく解けるが、5マイナス7だと問題が生ずる。そこで負の数という概念を導入する。そのような新しい数学を導入することを「超越 = transcend」と呼ぶという。
平和構築に向けて活動するガルトゥング氏を中心とする組織「トランセンド」の名前の由来なのだそうだ。
「こんな風にシンプルに考えればいいんだ!」と読みながら驚くことが多々あったのは、「超越」するための考え方の枠組みをも示してくれているからなのだと腑に落ちる。

国際的な紛争は複雑で、一生活者である私には手のほどこしようのない問題に思えていたのだが、まずは自分自身の視点と考え方の枠組みを丁寧に変えていこうと、この本を読んで思えた。

そして一つのアクションとして、このブログを記しておく。