発見いっぱい原田病日記|その5|「砂糖なしデザート」で血糖値対策

原田病日記

原田病(はらだびょう)を発症した私は、2015年12月28日から2週間入院し、1回1000mgという大量のステロイドを点滴する「パルス治療」を3日×2クール受けた。
この治療のあと、毎朝ステロイドの錠剤を飲む治療が2年9ヶ月も続いた(40mgからスタートして徐々に減らしていった)。

ステロイド薬の副作用には、高血圧、体重増加、ムーンフェイス、血糖値上昇、感染症、精神障害などがあると、治療開始時に渡された説明書に記載されていた。
私は精神障害にあたる「多幸症」の症状が顕著だったことは、「発見いっぱい原田病日記 その4|あの幸福感は、ステロイドの仕業だった」に記した。

もう一つ、顕著に現れたのが「血糖値上昇」だった。
「多幸症」は血液検査で数値的に現れるものではないので後になってやっと自覚したのだが、血糖値上昇については、リアルタイムに数値として明白に認識できた。
入院中は、必ず毎回、食前に血糖値を測っていたからだ。

「パルス治療」の2日目の夕方。
恒例の血糖値の測定のときがきた。指先にプチっと針を刺して採れるわずかな血液だけで、小さな計測器が瞬時に値を教えてくれる。
そのとき、夕食前だというのに私の血糖値はなんと184に上がっていた。
看護師さんはびっくり。
「通常は30程度、糖尿病の人でも95くらいなんですよ」と言う。
それを聞いて、私もびっくり。
そんな異常値が出るとは、頭を殴られたようなショックだった。

「何か食べました?」と看護師さんが問う。

隠しても仕方がないから、正直に白状した。
甘いもの好きな私は、自宅にあったクッキーとチョコレートと果物を入院時に持参していて、その日のティータイムにはクッキーを1枚、つまんでいたのだ。
しかもその日の朝、食欲がなくて残してたパンとクリームチーズとジャムも昼食後に食べていた。

看護師さんは苦笑い。
「あらー、ずいぶん食べましたねー」

ケーキやチョコレートをしこたま食べたわけではないのに、血糖値がこれほど破格に上昇するなんて。さすがに動揺したが、見方を変えれば、ステロイドが効力をしっかりと発揮している証ともいえる。
「きっと炎症も治めてくれるに違いない」と気をとり直した。

持ってきたおやつ類は無論あきらめて、お見舞いに来てくれた息子夫婦に持ち帰ってもらうことにした。

それでも、デザートが食べたい!

入院中は間食もデザートも全く食べなかったにもかかわらず、血糖値は130~160という高さにとどまっていた。薬のせいだから、仕方がない。

退院後も気にはなったが、「あまり神経質になる必要はない」と医師に言われたので測定器は買わずに、定期検査の血液検査だけで済ませることにした。

184ショックがあまりに大きかったので、以後、甘いものを食べたいとは思わなくなっていた。
「私は糖尿病予備軍だ」という危機感が常に胸に迫ってきたのだ。

そんなわけで、食事にはものすごく注意した。
WEBサイトで検索したり図書館で本を調べたりすると、血糖値を上げない食事の摂り方があることがわかった。

まずは野菜をたくさん食べる。
それから肉や魚などのタンパク質を適量。
ご飯やパンや麺類などの炭水化物は最後に。

その順番で食べると、血糖値が上昇しにくいという。
夕食の炭水化物を抜くと、さらに効果的だとも。

そんな簡単なことで上昇を妨げられるなら、やらない手はない。
こうして数ヶ月、血糖値を上げない食生活を実践した。

だけど段々と、デザートが欲しくなってきた。
バランスのよい食事を食べていても、最後にちょっと「何か」が欲しくなるのである。

さて、どうしたものか。
考えてみた。

デザートといえば、プリン、ババロア、アイスクリーム、コンポート、タルト、パイなどが思い浮かぶ。

それを食感で表すなら、
トロッとしたもの
フンワリしたもの
プルンとしたもの
サクッとしたもの
……などに分類できる。

考えるうちに、実はデザートの満足感は「甘さ」のみに依存しているわけではないことに、ハタと気づいた。食感が、とても大事なのだ。加えてスイーツっぽい見栄えも。
であれば、工夫のしがいがあるではないか。

そこで、あれこれやってみた。

トロっとしたものといえば、ヨーグルトがある。ヨーグルトは、コーヒーフィルターを使って水気(ホエイ)を切れば、ホイップクリームのようなフンワリ感も出せる。
サクッとした歯ごたえは、クルミ、アーモンド、大豆などのナッツ類があれば変化が出る。
もともと甘みの多いカボチャやサツマイモに「水切りヨーグルト」を組み合わせれば、ケーキやタルトのようなゴージャス感も漂う。

サクっ、カリっ、ムギュっ…といった歯ごたえが、「デザートっぽさ」を添えてくれるナッツ類
水切りヨーグルトをオーブンで焼くと、まるでレアチーズケーキのようになる。レモンの皮の蜂蜜漬け少々とレーズンを添えて
蒸し煮したカボチャに、水切りヨーグルトとナッツをトッピング

ちょうどその頃になると、入院中からしばらく「カリウムが多いから食べないように」と医師からアドバイスされていた果物類もOKが出たので、リンゴのワイン煮(もちろん砂糖を入れずに煮る)、プルーンのホエイ漬け(水切りヨーグルトを作るときの副産物のホエイにドライプルーンを漬けるだけ)などもデザートメニューに加わった。

シナモンをふりかけると、香りとともに甘みが引き立つ

市販の甘いものをしばらく食べないでいると、味覚が変わる。
そもそも野菜もヨーグルトもナッツ類も、甘いのである。その甘さに敏感になった。

その素材の甘さだけで、十分に「甘いもの」になる。
そのことに、「砂糖なしデザート」を工夫するうちに気づいていった。

今は、ステロイド投薬治療を終えて半年以上が経つ。でも、以前のように甘いお菓子が食べたくなることはない。
むしろ市販の甘いお菓子を食べると、なんだか体が疲れる気がするほどだ(かつては「甘いものを食べると疲れが取れる」と感じていたのに)。
だから、今も基本は「砂糖なしデザート」の日々である。
寒天やゼラチンで果汁や牛乳を固めるゼリー系のデザートも定番だ。

ただ、ときどきは市販のスイーツを食べることがある。
誰かと一緒にカフェで楽しいひとときを過ごすとき。
どこかに行って銘菓と出会ったとき。
そんなときは、「やっぱりスイーツっていいな」と思う。