浴室をリフォームすれば、筋力がアップする?

日々の楽しみ

91歳の父と同居することになった昨年8月末から、もうすぐ一年になる。

築50年近い木造の自宅には、洗面所と浴室に20㎝強の段差があり、洗面所には踏むと床がペコペコする箇所もあり、ヒートショックによる高齢者の事故の多さを容易に実感できるほど冬の浴室&洗面所は寒い。トイレの水槽のレバーはそのままでは元に戻らず、父の使用後に水が流れっぱなしになるのもしばしばだった。

というわけで、浴室、洗面所、トイレという一連の水回りのリフォームを決行することにした。アラ還の私たち姉妹にとっても、老い支度の絶好の機会だと考えて。

姉が職場で夏休みを取れる時期に合わせて、父と連れ立ってもともと父母が住んでいた札幌のマンションに滞在するのが安全・安心だろうということで、工事は、すでに酷暑の季節に突入していた7月19日から7月末にかけての予定となってしまった。狭い室内で工事を進めてくださっている職人さんたちには、ほんと、申し訳なくなるほどのクソ暑さ。すみません、と言ってもどうにもならないので、飲み物やアイスなどの差し入れで感謝の気持ちを伝えてます。

というわけで、姉と父が旅立ったあと、いよいよ7月19日に工事が始まった。
以後、浴室が丸々1週間使えない。
でも私一人なら「なんとかなるさぁ〜」と気軽に構えていたのだが、現実には、とめどなく汗が流れる酷暑の毎日、風呂なし生活は悩ましかった。

当初は、自宅から1.5kmほどのスーパー銭湯に通うというシンプルな策で解決するつもりだったのだが、実は私、銭湯とか温泉とかがあまり得意ではないのです。友人が温泉巡りをしているSNSの投稿なんかを見ていると、「いいな〜、気持ちよさそうだな〜」と思うのだけれど、自分ではあまり楽しめない。
で、1日目の夜、なんだかすごく億劫になってしまった。

そこで、台所の流しで湯浴みするという原始的な方法にチャレンジすることにした。「そういえばあったはず」と物置から掘り出してきた直径50cmほどのプラスチックの大きなたらいを、ブルーシートとバスタオルを敷いた上に置いて、レッツ・チャレンジ!

やってみると、意外とできるもので、髪の毛、顔、首、両腕、上半身前面、脚と足は、流しで洗えた。思っていたよりも余裕だった。日頃からストレッチで体の柔軟性を保ってきた甲斐があったというものだ。蛇口の下に頭を突き出すのも、流しに足をあげるのも全然OKだったのよ。

難しかったのは、背中だ。
足元に置いたブルーのたらいの上にしゃがみ、肩口から背に向けて洗面器のお湯をかける。勢いがよすぎると床が水浸しになってしまうから、たらいがお湯をキャッチできるような塩梅でソーッと注ぐのがミソだ。足を置く位置によっても、姿勢によっても、お湯の流し方によっても、たらいの縁から逸れてしまう。
なかなか緊張する作業であったが、そういう細やかな手加減を探るのは嫌いじゃない。

しかも、予想よりも全身さっぱり爽やかな洗い上がりで、やり遂げたあとには達成感も湧いてきた。
やるな、おぬし。ムフフ。

その上、振り返ると、お湯の使用量が圧倒的に少なかった。ジャージャーとお湯を流しながらシャワーを使う日常と比べれば、10分の1どころか、20分の1だったかもしれないぞ。
エコ的にも高い達成感である。ついでにスーパー銭湯の利用料750円も節約できたことになる。イエーイ!

そんなわけで、勢いづいた私は二日目も台所で楽しく試行錯誤に励んで達成感に浸ったのだったが、さすがに三日目は二の足を踏んだ。というのも、いくら体の柔らかな私とて、蛇口の下に頭を突き出すときの首の負担が大きく、再びそれを繰り返すか?と自問するに、いやいや今日はやめておこうという結論に至ったのである。それに、思いっきりザーッと背中を流したい!という願望もさすがに募っていた。
で、いざスーパー銭湯へ!とあいなり、夜8時を過ぎた頃に1.5km先を目指して自転車を走らせた。

そのスーパー銭湯には、地下1,700mから湧出したという温泉の露天風呂があって、露天だけでも岩風呂、寝湯、壺湯が揃い、内風呂には高濃度炭酸泉の湯船、ジェットバス数種、サウナも付いている。すごい、よりどりみどり。
好奇心からか貧乏性からか、せっかくならいろいろ試してみたくなる私である。だけど、夜になっても25度を切らない暑さのなか、長湯したら後でどんだけの汗が吹き出るかと想像するだけでゲンナリし、全てカラスの行水で済ませてしまった。あれもこれも入ってみたんですけど、結果、ちょっと忙しなかったわ。サウナに至っては、入らなくても畑で日々とめどなく汗を流している。もう充分。
というわけで、「また行くか?」と自問すると、答えはNOなのであった。

そんなわけで帰宅後、「近所に、シャワーだけ浴びれるところ、ないかなぁ?」……とパソコンに向かって調べたところ見つけたのが、市のスポーツ施設だった。

市民体育館には、いろいろなマシンが並んだ立派なトレーニング室があって、利用料は2時間単位で420円。ロッカー1回50円、シャワー5分100円とある。ふむ。
さらに調べてみると、市民武道館には利用料200円の「ラウンドフィットネス」なるものがあり、シャワーについての記載はなかったけれど、施設概要には「シャワー室」の文字が私には光って見えた。翌朝、電話で問い合わせると、フィットネス後に無料でシャワーが使えるという。ムフフ。しかも、武道館は体育館よりも家から近い。

というわけで、その夕方、利用条件になっている無料の初回講習を受けた。
「ラウンドフィットネス」とは、油圧マシン(筋力運動)とステップ(有酸素運動)を30秒ずつ交互に行うサーキットトレーニングで、一回のトレーニングは体力やその日の体調に合わせて20~40分、自分で調整するのだという。
やってみると、これが悪くない。自宅で軽い筋トレはときどきやっているが、家にはマシンはない。マシンがあると、やってる感が盛り上がる♪

ハンドルを持ってボート漕ぎみたいな動作をするマシン、肩に軽く圧をかけてスクワットするマシン、ハンドルを握って腕を上下させるマシンetc.が6種、その合間に行う有酸素運動のお手本は、テレビ画面にDVDで再生される。若い女性1人と後ろの筋肉マン2人がリズミカルな音楽に合わせて動くのを見ながら、スクエアマットの上で30秒。ステップと腕の動きは順々に変化し、瞬時に真似できなかったりスクエアマットを踏み外したりもするけれど、誰が見ているわけでもない、ノー・プロブレムなのよ。で、想像していたよりもずっと楽しかった。

夕方の利用者が日頃からあまりいないのか、たまたまなのかわからないが、私が利用した金・土・日・月の4日連続、一人きり。かち合う人はシャワー室にもおらず、気兼ねなくすっきりできた。もちろんゴージャスな設備ではなく、シンプルなシャワー室なのだが、全然OK、充分でした。更衣室には自由に使える電源はなく、洗った髪はドライヤーで乾かすことはできず濡れたままだったけれど、この暑さなのでまったく問題なし。

そんなわけで、浴室修繕が転じ、なぜかトレーニングに励むことになった4日間。
「風が吹けば桶屋が儲かる」ほどの紆余曲折じゃないけれど、まさかの展開。
さすがに3日目と4日目は、暑さや外出や仕事でくたびれていて「わざわざフィットネス???」な気分になったが、じゃあ、台所湯浴み?スーパー銭湯?と比べれば、30分ばかりのトレーニング+シャワーに軍配が上がった。

姉と父が戻ってきた火曜から、新しくユニットバスになった浴室が使えるようになり、ひとまずフィットネスは中断とあいなった。なにしろ、まだ洗濯機が使えないもんで父の分の手洗い洗濯もあるし、独身生活よりも食事の支度や片付けにも手間暇がかかる。
思えば、意図せずしてフィットネスに励めた4日間は、すごく貴重だったのかも。背筋や骨盤底筋が鍛えられたような実感もあるしね。

さて、リフォーム工事が完了したあかつきに、私はフィットネスを再開するのであろうか?
やりたいような気もするし、どうでもいい気もする。
ま、いまは猛烈に暑いしね。
やりたくなったら、再開するわ。

4日目、スタンプカードの枠に赤い印を押しながら、「わぁ、がんばってますね」とチアアップしてくれた受付の女性スタッフの笑顔をときどき思い出しては、ちょっと後ろめたい気持ちになってます。笑

ラウンドフィットネスのマシンいろいろ

新しいタブでプレビュー