父92歳のシャツインコーデがヤバい

日々の楽しみ

モードというのは、時代によって移ろうもの。
流行りの着こなしも、時の流れとともに変化する。
かつて流行った着こなしといえば、例えば、トレーナーを裏返しに着るとか、ソックスをルーズにずり下げるとか、ズボンのウエストを腰まで下げてトランクスを見せるとか。
あったよね、いろいろと。そして流行が去ってしまえば、「あれ、なんだったの?」とダサく感じられてしまったりするのが興味深い。

さて、昨今の着こなしトレンドとして注目されているらしいのが「シャツイン」だ。
某ファッション商業施設ブランドのwebサイトのコラムなどを見ると、シャツインとは「シャツやTシャツなどのトップスを、ボトムスの中にしまう着こなしです」とされ、「今っぽくおしゃれにシャツインを着こなす」ためのやり方やおすすめのバランスが紹介されていたりする。
それによると、かっこいいメンズのシャツインコーデのコツは2つ。「ジャケットの白Tインナーの前だけをイン」と「ふんわりと服にゆとりをもたせてこなれ感を」なのだそう。

で、今日の本題。
タイトルのとおり、父92歳のシャツインコーデについてである。

現在92歳の父は認知症で、服の組み合わせがよくわからなくなっている。というか、昔から服は母が揃えるのが習慣で、いつも「おまかせ」だったので経験不足もあって苦手分野な上に認知症だから仕方あるまい。一年半前から姉と私と同居するようになってからは、コーディネートは主に姉が担当していて、夜就寝前に翌日着る服をセットにして椅子にかけておいてくれるのだが、いざ着替える段になると頭を出す襟ぐりや手を通す袖がわからなくなって混乱することもしばしばだ。着る順番がわからなくなるのは日常茶飯事で、朝晩の着替えは要所要所でサポートが必要だ(たまに一人でできることもあるが)。デイサービスで入浴した日、タートルネックシャツの上に、あったか下着、その上にセーター、ダウンジャケットというニュースタイルで帰ってきたことも何度かあった。自分でがんばって遂行したことが読み取れる。

サラリーマンとして人生の大方の日々をスーツを着て過ごしていた父は、いつもYシャツをピシッとズボンにしまってベルトを絞めていた。
というわけで、スーツを卒業した今も、彼のベーシックはシャツインである。

まぁ、ポロシャツとか丸首シャツならシャツインでけっこうなのだが、冬季、セーターもインしてしまうのは、娘たちの目にはちょっとイケてなく映る。
上記コラムによる「かっこいいシャツインコーデ」の1つ目のポイントである「前だけイン」になっているときもあるのだけれど、「白Tインナー」じゃないからか全く冴えない(というか、父の場合は単に「だらしない」だけ笑)。
そして「かっこいいシャツインコーデ」の2つ目のポイントである「ふんわりと服にゆとりをもたせて」という風でもあるのだけれど、やはり「こなれ感」は醸されない(というか、年とともに痩せてきてダブついちゃっているだけなのね笑)。
で、「シャツインは良くても、セーターインはなしだね」というのが娘たちの結論であり、「セーターは出そうよ」と促すのが常となっている。
しかし上記コラムをじっくり読んでみると、「今季らしいシャツインスタイルに挑戦したい人は、鮮やかな色のニットをインするコーデがおすすめです。インするイメージがあまりないニットだからこそ、人目を引く個性的なファッションに仕上がります。」とあるので、来季用に鮮やかな色のニットをコーデ係にリクエストして新規蒔き直しを図るのも悪くないかもしれない。

そして先日、デイサービスに送り出さんというその時に、父の姿を見て私はびっくり。
なんとも不思議なシャツインコーデになっていたのだ。
あったか下着(上)、タートルネックシャツ、セーターの3枚が、あったか下着(下)に全てインされているのが見てとれるのは、あったか下着(下)の灰色の布地とウエストの黒いゴムが、ボトムスのベルトの上部に露わになっているからだった。なんとも奇天烈。見たことのないコーデだった(って、この説明でわかりますかね?)。どうやら朝食後にトイレに行ったついでに自分でアレンジしたようだ。出がけの慌ただしさで写真を撮りそびれたのが悔やまれる。

そんなわけで、父のシャツインコーデから目が離せないワタクシです。
参照した上記コラムは、こちら。
シャツインのメンズコーデ|おしゃれな着こなしをマスター BY マルイ編集部 (最終更新日:2022/7/15)」
父のシャツインコーデのダサさが目に焼き付いているから、その文章の一言一言にも写真一枚一枚にも父の姿がオーバーラップしてしまいクックックと笑いを誘われる。とかくキレそうになることの多い介護の毎日のほんのひととき、ファッションコラムが思わぬ気晴らしになっています。