父を所沢に連れてきて10日。まずまず順調な スタートです

日々の楽しみ

母が大腿骨を折って入院し、一人暮らしのできない90歳の父を、札幌から所沢に連れてきて10日が経ちました。

日々、あれこれ小事件は起きますが、まぁ想定内というところ。
慣れないうちは夜中にトイレじゃないところで粗相をするんじゃないか、とか、一人でふらっと外に出ようとするんじゃないか、とか、そんな予測の範囲内で収まっています。
なので、まずまず順調なスタートと言えそうです。

90歳を超えても全部自分の丈夫な歯で私たちと同じ普通の食事をしっかり噛んで食べ、ヨタヨタゆっくり杖をつきながらだけれど2000〜4000歩程度の散歩もできて、毎日自分でシャワーを浴び、毎晩たっぷりと睡眠を取れている。ブラボーな適応力です。

「合わなかったらどうしよう?」と姉と気を揉んでいたデイケアも、先週は予定通り3日間、今週もすでに1日、駄々をこねることなく通ってくれました。
昼食後や早帰り組が去ってしまった15時半過ぎに、「つまらない」「帰りたい」と電話をかけてきたことが何度かあったけれど、夕飯時に話を聞いてみると、「石原裕次郎の曲を歌ったら『声がいい』と褒められた」とか、「クイズでいろいろ回答したら『物知りですね』と感心された」とか。「おだてられてるだけだ」なんて言いながら、なにげなく鼻の下が伸びているような。けっこう楽しめてるみたいで、よかったよかった。きっとスタッフのみなさんが、いろんな心遣いをしてくださっているのだと思う。ありがたい。

「北海道出身の男性Aさんと同じテーブルで話をした。Aさんは俺に興味があるんじゃないか」と、まるで子どものような口ぶりで姉と私に報告したりもする。新しい出会いにワクワクしてるのかな。いいことだ。

ともあれ、環境の変化に前向きに応じている父は、えらいと思う。

ときどき「ここは札幌か?所沢か?」と聞いてきたり、「ママはどこだ?」と不安そうにしたり、「90になると、頭が変になるなぁ」と混乱したり、「足がふらつく、もうダメだ」と弱音を吐いたりもするけれど、基本的には超ポジティブ。
こちらのケアマネさんとの初面談では、「できるだけ元気で長生きしたいと思っている」とか「碁も、もっと強くなりたい」などと前向きな発言をしていて、横で聞いていて、ほぉ、と感心してしまった。

週末は、入院中の母にみんなで手紙を書いた。
父のを見ると、なんと、たった2行。
「早く出て来て!
 慣れない生活に右往左往しています」
・・・前向きに振る舞っていても、実は心細く感じているんだな。

そう思うと、なるべく優しくしてあげなくちゃと思うのだが、父が家にいると私たちは何かと大変。
「そろそろ散歩に行こうと思うんだが」「パソコンが変だ」「手帳がない」「ママから電話はあったか」「ひ孫の写真が俺も欲しい」「中学の名簿はどこだ?」etc.・・・なんだかんだなんだかんだ寄ってくる。
明日着る服の準備も、お風呂あがりのドライヤーも、食後の歯磨きも、備忘の日記付けも、一緒にやらなくちゃできない。もちろん、ご飯の支度や片付けや掃除やゴミ捨てなどの家事はいっさいできない。一人でできるのは、新聞に目を通すことと昼寝くらい。
それなのに、しばしば俺様風を吹かせるものだから、しょっちゅうイラッとさせられます。

まぁそんなわけで、姉と私でなにげなく父の世話と家事を分担しているものの、私たちの自由時間は激減。本や新聞を読んだり勉強したり、のんびりマイペースでくつろいだりも、思うままにはできません。

とはいえ、ボケた父を観察するのはなかなか面白いのも事実。
夕食後のひとときにしりとり遊びでゲラゲラ笑ったり、昔話を聞いて若かりし頃の父を想像したり、今だからできることを楽しむようにしています。