春、庭にひょろりと生えてきた葉っぱがあった。
きゃー、うれしい♪ 桑よ、桑、桑じゃないの〜!
2017年と2018年の今頃、私はせっせと蚕を育てていた。
2018年には、ブログに「お蚕さん日誌」を綴るほど入れ込んでいた。かわいくて愛おしくて生命の不思議にメロメロだった。
で、お蚕さんが食べるものといえば、桑の葉。
毎日毎日、散歩や買い物のついでに道端に生えている葉をプチプチと摘んできてはお蚕さんに与えていた。いつも探し歩いていたので、町内のどこに生えているのか熟知していたが、忙しかったり暑かったりするときは、「庭に生えてたらいいのになぁ」と何度思ったことか。
というわけで、馴染み深い形の葉をつけた桑が庭にひょろりと生えてきたのを見つけたときは、飛び上がりたくなるほどうれしかったのである。
ところが、桑が生えてきたのはキンモクセイの根元だった。しかも、かなり接近した位置だった。きっと、キンモクセイに止まった鳥さんの落とし物から育ったんだろうな。この位置じゃ、このまま大きくなるわけにはいくまい。
だけど、できることなら「桑の木」と呼べるくらい大きく育ってほしい。
できることなら実も生って、マルベリー・ジャムなんか作れちゃったら♡・・・と夢は膨らむ。
そこで、何も木が植わっていない玄関脇のスペースに移植することにした。4月中旬頃のことだった。
まだ40cmほどの丈だったが、周囲を掘ってみると意外と根が広く張っていて、傷つけないように用心しても、何本かの根は途中で切れてしまった。
そして移植後数日で、ほとんどの葉がしおれてしまった。
あーあ、やっぱり無理だったのかなぁ・・・と胸を痛めていたのだが、2週間ほどすると、なんと、つやつやとした新しい葉がいっぱい出てきた。すごい生命力だ。
そして今、6月後半。丈はすでに1メートル近くなり、旺盛に葉を茂らせている。
大きくな〜れ、大きくな〜れ♪
しっかり定着してくれたら、またお蚕さんを飼う機会もやってくるかも?
そして、やはり4月中旬のことだった。
ホスタさんがやってきた。
ご近所さんが、「株分けしたけど、植えますか?」と持ってきてくれたのだ。
一抱えもある大きな立派なホスタさん。
ずっしり重くて、たぶん5〜6キロはあったんじゃないだろうか。
きれいな株で、ご近所さんの丁寧さと愛情がうかがえた。ありがたし。
移植後も健やかに葉を伸ばし、今は、ひょろりひょろりと数本の茎が伸び、先っぽに蕾がついている。もうすぐ花が咲きそうだ。
それから、こちらは安納芋。
キッチンで芽が出てしまった芋を土に入れたところ、次々と葉が増えてきた。夏を越して秋になったら、収穫できるかな〜♪
といった塩梅で、いきあたりばったりで仲間入りした植物たちが、我が家の庭のあちこちに生息している。
コロナはなかなか収束しないし、社会やら仕事やら介護やら将来やら悩みは尽きないし、ややもすると停滞感が広がって心がモヤモヤしがちな毎日だけど、こうして植物たちが着々と根付いていくのを見ていると、私も気付かぬうちにいつのまにか根を張って生きているんだと思えてくる。
ふと気づくと、シソやエゴマもそこここに葉を出しているではないか。去年に植えた何かが、思いがけず育つこともあるんだよな。
あれ? こんな種も蒔いてたっけね・・・そんなことは、社会やら仕事やら介護やら将来やらにも、きっとあるはず。
「焦らずボチボチ生きていこうぜ」と庭が囁いてくれている気がします。