先週末、書斎を片付けようとして、つい、書棚に置いてあった2冊を手に取り読み始めたら、止まらなくなってしまった。桜沢鈴著『義母と娘のブルース』(ぶんか社2018年8月)の上下巻。(そして、やりかけた片付け計画は、頭の中からうっかり片付けられてしまった。笑)
TVドラマ『義母と娘のブルース』は2018年7月からTBSで放映され、人気を博した。
私も毎週火曜を心待ちに10週間を過ごしたことを、昨日のように思い出す(正確にいうと、テレビを持たない私は見逃し無料配信でPC視聴していたので毎週水曜だったけど)。放映終了後、ポッカリと心に空いた穴を埋めるべく、あのシーンこのシーンがまだ記憶に新しいうちに原作マンガを手に取った。
で、正直、なんとなく物足りなく感じたのだった。
というのも、1シーズンのTVドラマといえば、合算すれば約50時間に及ぶ。なのに、原作マンガはたったの2巻。当然ドラマの方が、エピソードの一つひとつが微に入り細に入り描かれているわけである。原作にはない場面が加えられていたりもする。読みながら、「えーっ!? あのシーンが4コマだけで済んでしまった!?」「あらー、あの逸話は原作には出てこないんだ!!」と何度驚かされたことか。
しかも、義母役の綾瀬はるか・娘役の上白石萌歌をはじめ、竹野内豊、佐藤健、井之脇海・・・それぞれの役者さんの印象が強すぎて、「えーっ!? あの役がこんな風貌?」などと違和感を覚えずにいられなかったりもした。
しかし今回再読し、「いやいや、原作もすごいじゃないか」と認識を改めながら、味わい直すことができた。う〜ん、TVドラマもマンガも、それぞれの表現の妙が豊かで素晴らしいじゃないか。
さて、物語の大筋は、こうだ。
妻に病で先立たれたシングルファザーが、自らも病で余命わずかと知る。そしてひょんなことから、ライバル会社の超有能なキャリアウーマンに幼い娘を託すべく、彼女と結婚する。ある種の契約結婚的な展開から、血のつながりのない義母・あきこさんと娘・みゆきちゃんの風変わりな「家族」が生まれる。元キャリアウーマンは専業母となり、やがて働く姿を娘に見せんとして近所のパン屋の立て直しに奔走し、いよいよ娘は独立し、義母はあらたなキャリアを築いていく。(ちなみに、原作とTVドラマでは終わり方が違う。)
現実には、ありそうもない筋立てだ。
一つひとつのエピソードも、まあ、ぶっちゃけ非現実的な出来事ばかりだ。マンガだから表情やリアクションにも誇張が多く、ドラマではさらに奇抜な演出が加味される。
初対面の子どもにビジネスライクに名刺を差し出して自己紹介するとか、子どもを楽しませようとお腹にマジックで顔を描いて腹芸を披露するとか、「キャラ弁」をリクエストされてキャラクターグッズ会社の株価のグラフを海苔で描くとか、それはそれはもう常軌を逸した数々の奇行を繰り出すのである、あきこさんは。
なのに、人物設定も出来事もリアルで必然的であるかのような心持ちにさせられ、その人間味にグイグイと心を掴まれ、いつのまにかその世界観にどっぷり浸っている。
不思議だ・・・想像力と創造力のマジックだ。
ときに精彩を欠くように感じる私の現実だって、そんなドラマチックなフィルターをかければ、エゴや愛が味わい深く見えてくるんじゃあるまいか・・・なんて思えてきたりもして、いつしか心がふくふくと温められる。マンガもドラマも素敵だ。
それにしても昨今、マンガのドラマ化がなんと多いこと。
観ては読み、読んでは観て・・・お楽しみが増殖しすぎて、片付け計画が想像の世界に置き去りになりそうだ。ここはひとつ、目の前の現実方面に創造力を発揮せねば。
と、ゴールデンウィークを間近にひかえて思ってはいるのだが、さてどうなることやら。読んだらまた観たくなって、ドラマ配信サービスの「2週間無料体験」の誘惑がまぶしすぎる。