印象深かった! 所沢市議会政策討論会『女性が社会進出するためには〜女性の声をもっと政治に!』を勝手にレポート

気になること

2020年2月8日(土)の午後、西武新宿線の新所沢駅の近くにある『こどもと福祉の未来館』で開催された所沢市議会政策討論会『女性が社会進出するためには~女性の声をもっと政治に!に行ってきた。

所沢に住むようになって丸2年。なのに、まだまだ地元民意識が深まった気がしない私だが、昨年2019年が選挙ラッシュの一年だったおかげで、地域にかかわる政治家のみなさんの顔と名前は頭に刻まれてきた。なにしろ、4月に市議会議員選挙と埼玉県議会議員選挙、7月には参議院議員選挙、10月には市長選挙と県知事選挙という年間5選挙という高密度だったのだ。
そんなふうに地元民意識が醸成されつつあるタイミングに加えて、昨年末に世界経済フォーラムが発表した「ジェンダーギャップ指数」のランキングで日本は153カ国中121位、G7では最下位という惨憺たる結果になっていたことが記憶に新しく、「女性の声をもっと政治に!」というテーマで地元の議員さんたちが政策討論会を実施するなら、これは行かないわけにはいくまいと思ったのだった。

行ってみて、よかった。とてもよかった。
「政治討論会」というより、「公開議員懇談会」という印象の会だった。女性6名・男性3名、合計9名の市議さんたちが、自らが議員になった背景にある体験や、日々のライフワークバランスにおける葛藤をオープンに語っていたのが心に響いた。

・妊娠したら退職を迫られて抵抗したものの産休明けに転勤を言い渡されて裁判で闘ったという女性議員さん。
・子どもが生まれてからも仕事を続けようとしたけれど、職場環境を変えられず断念したという女性議員さん。
・公の場で語るのは初めてだが元夫のDVで離婚したという女性議員さん。
・仕事もして、家事もして、介護もして大忙しだったお母さんが病気になって亡くなってしまったという女性議員さん。
・初めて産休をとった女性議員さんのサポートで委員を掛け持ちしたときの忙しさを語る男性議員さん。
・フルタイムで働いている妻と家事と保育園の送り迎えの分担にあくせくする大忙しの格闘の日々を語る男性議員さん。

……そうした生の声を聞きながら、議員さんもみんな普通の人で、生きづらさに満ちた同時代を生きているという、あまりに当たり前の事実に、あらためて感じ入ったひとときだった。

途中、「うちの主人が~」「ご主人が~」「奥様が~」と発言する市議さんがいて、会のテーマがテーマだけに思わず苦笑いしてしまった場面があった。「主人」や「奥様」は、上下関係や身分を想起させる言葉だ。なるべく使わないようにと思っている私も、シチュエーションや相手の雰囲気に合わせて口にしてしまうことがあるとはいえ、こうして観客席に身を置いていると、さりげない言葉づかいからジェンダー意識のレベルがそこはかとなく伝わってくるものだと痛感した。今後は、私もしっかり気をつけようと思った。

どうして男女格差がちっとも小さくならないんだ?????

市議さんたちの「討論会」の前に、基調講演として名取はにわさんが「政治分野における男女共同参画」と題した話をされた。名取さんは1973年に法務省に入省され、1995年に総理大臣官房男女共同参画室長となり、1999年の「男女共同参画社会基本法」の成立に至る舞台裏で尽力された方だ。

この法律がいかに画期的でエポックメイキングかを示すために、名取さんはその前文を示された。
男女共同参画社会の実現を21世紀の我が国社会を決定する最重要課題として位置づけ」という一文だ。

そして、「男女共同参画社会」とはいかなるものかを端的に、
・男女が、社会の台頭な構成員として、
・自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保され、
・もって男女が均等に政治的、経済的、社会的及び文化的利益を享受することができ、かつ、ともに責任を担うべき社会

であることを強調された。

なんと、男女共同参画社会の実現が「最重要課題」として位置付けられたのは1999年だったのだ。すでに21年も経っている。にもかかわらず、日本における女性の地位は向上していない。
非正規雇用や貧困の割合を見ても、女性の地位の厳しさは明らかだ。数々の医大で男性受験者にゲタを履かせ、女性受験者が不当に不合格にされていたことも発覚している。そして、あいかわらず企業や行政の管理職でも、国や地方の議会でも、女性の割合は依然として低い。結果、「ジェンダーギャップ指数」の国際ランキングでも、日本は152カ国中121位という史上最悪の状況であることが可視化されているのである。
法律の成立年に生まれた赤ちゃんが成人するほどの年月が流れているというのに、こんな悪状況が続いているとは! いったいどうしてなのだろう? あらためて、大きなため息が漏れてしまう。

この会での名取さんのお話は25分という短い時間で、歴史の大枠を振り返るにとどまったのは残念だったが、これまで「男女共同参画社会基本法」について勉強したことがなかった私にとっては、背景を理解し、あらためてガツンとショックを受ける良い機会となった。もっと知りたい、ちゃんと理解したいと思わされもした。
また、名取さんは所沢市の「男女共同参画条例」がとても素晴らしいものだと褒めていらした。これを機に目を通して学び、どうすれば有効に活用して社会の変革につなげられるのか考えていきたい。