できたぞ!父のエッセイ集

編集のあれこれ

5月に「つくるぞ!父のエッセイ集」で宣言したように、父が旧制三校の同窓会の仲間たちと運営していた『回覧板』に書き綴っていた文章を一冊のエッセイ集として編集した。
当初は9月の父の誕生日に余裕で間に合うだろうと考えていたのだが、夏の札幌滞在中は暑すぎて校正がちっともはかどらなかった。そんなわけで完成したのは11月。父の誕生日から2ヶ月遅れになってしまった。

はじめ「本にしよう」と父に伝えたときは、「いやぁ、人に見せるのは嫌味だし」などと後ろ向きな発言をしつつ、「本当にできるのか?」と半信半疑ながらも嬉しそうな様子だったが、シンプルかつ風合い良く仕上がった完成品を見て、「なかなかいいじゃないか」と満足してくれた。そして「よく書けてるじゃないか」と自画自賛。
母は「何か書いているのは知っていたけど、こんなにちゃんと読めるものだったなんて。すごいわね」と褒め称え、父の鼻の下がさらに伸びたのであった。
よかったよかった。

きれいに梱包されて30部届いたところ。
パラフィン紙のカバーが上品。
紙質も色合いも手触りも、品のある仕上がり。
判型は、BOCKSで一番大きいA5変形に。高齢者にも読みやすい。

利用したのは、『紙のBCCKS』。
Webサイト上のシステムを使い、原稿を流し込んでレイアウトを整えて製本をオーダーする。仕組みを理解すれば難しいことは何もない。そこそこの制限があるので、見出しのフォントや写真の配置などのデザインに若干気になる箇所もあるとはいえ、制限があるからきれいな仕上がりになるとも言える。いずれにしても、ほどほどに体裁の良い本が、こんな簡単にできてしまうなんて感動ものである。
3部オーダーしても、30部オーダーしても、1冊1,254円(税込)。お手頃な値段だから、試し刷りで校正してから注文できたのもよかった。

制作過程も記しておく。
まずは、父のファイルから1冊に構成できるように文章を選んだ。データ原稿がなかったので、ゴールデンウィークの札幌滞在中にパソコンで打ち直した。それをプリントして、父はもちろん、姉と妹にも校正してもらった。そして10月に一度、3部だけ製本をオーダーし、それを母も含めて家族中で校正し、最終的に30部印刷した。表紙の色味は、姉のチョイスで決定した。
完成した本を見直してみると、目次に最後の1章のタイトルが抜けていたり、母によると旅行の日付が違っていたり(校正段階で母自身が赤入れした箇所を反映したのだったが)するのだが、まあご愛嬌。みんなで父の文章をそれぞれに読み、父の考えや同級生への振る舞いを垣間見たり、思い出を共有したりできて、それをみんなでシェアするという楽しい家族イベントになった。

せっかくなので、「もう一冊、書き下ろしで作ろうか」と提案している。
父は「人生100年時代について書いたらいいよなぁ」と言うのだが、私は「つまらない我説より、三高時代のエピソードの方が面白い」とけしかけている。実際、父が聞かせてくれる思い出話が面白いからだ。先生が点呼をとると30人クラスほとんど出席しているはずなのに頭数は8人しかいなかった体育の授業とか(1人で何人分の代返をしてたんだ!?)、ドイツ語の先生の家に「突撃しよう」と友達に誘われてついっていったらビールとおつまみで歓待してくれたとか(未成年なのに!!)、なんというかおおらかで自由な校風だったことが伝わってくる。

まずはこれから年末年始に父母の家に滞在するあいだに、父と二人で本の台割をつくり、計画を立ててみようと思う。父のボケ具合のチェックにも、生きがいを添える手伝いにもなるんじゃないかな。