ルース・ギンズバーグがアメリカ合衆国最高裁判所の歴代2人目の女性として判事になるまでに受けた女性差別をたどる伝記絵本が、とてもチャーミング♪

気になること

ルース・ベーダー・ギンスバーグは、1933年3月15日生まれで今年2020年には御年87歳、現役でアメリカ合衆国最高裁判所の判事を務めるスーパー・ウーマンだ。
そのルース・ベーダー・ギンスバーグのあゆみをたどる伝記絵本が『大統領を動かした女性 ルース・ギンスバーグ』(ジョナ・ウィンター著/ステイシー・イナースト絵/汐文社)。サブタイトルに「男女差別とたたかう最高裁判事」とある。

とてもチャーミングな絵本だ。
なんといってもStacy Innerstの絵がチャーミングすぎて眺めているだけでワクワクさせられる。
そして読者を「陪審員」に見立てて「女の子(=ルース・ギンスバーグ)」が経験した不公平がどんなものだったか「証拠」を見せていくという構成も面白い。

不公正は生い立ちからはじまる。
両親は、迫害を逃れてヨーロッパからニューヨークのブルックリンに移り住んだユダヤ人で、当時のアメリカでは『犬もユダヤ人もお断り』なんていう看板を見かけるくらい人種差別が根強かった。
また、「女性は家にいるべき」という縛りの厳しい時代だったので、本好きで知的なお母さんは専業主婦にとどまらざるをえなかった。
そして、ルースが大学に入った1950年、学生の男女比は4対1。圧倒的に女子が少なく、「デートにさそわれたいと思えば、かしこくないふりをしていなければいけません」という同調圧力が蔓延していて、勉強熱心なルースは男子学生に見られないようトイレで勉強したというエピソードも出てくる。

ほかにも、
・給料が男性より低かった
・ハーバード大学法科大学院には女子学生用の寮がなかった
・法律図書館に入室を女性だからと拒否された
・一番の成績で大学院を卒業しても女性には法律事務所に門戸は開かれていなかった
・大学の教授になったものの男性教授より給料は低く、教授会での発言は無視された
etc.……というような不公正の「証拠」が次々と挙げられる。

これほどの不公正があふれるなか、くじけて諦めてもしかたがないような棘の道を歩んできたルース・ベーダー・ギンズバーグの人生をたどりながら、読者は「不公正」や「差別」とはいかなるものかを一つひとつ確認し理解し、それらを乗り越えてきた彼女の意志と正義感の強さに、しみじみと敬意を覚えずにはいられなくなる。

加えて「作者あとがき」では、彼女が女性の権利拡大に貢献するのみならず、男女間の不平等は男性も女性も傷つけるという論理にもとづいて「平等の保護」の考え方を広めてきたことや、最高裁判事就任後に彼女が多数意見に対して突きつけた痛烈な反対意見表明の数々についても知ることができる。

先だって観た映画『ビリーブ 未来への大逆転』にも私は大きな感銘を受けたが、映画の内容を補足してあまりあるエッセンスが凝縮された絵本だった。映画とあわせて、多くの方にぜひ手に取ってほしい。