あきらめそうになっていた敷金、消費生活センターに相談したら全額取り戻せた!

気になること

引越で賃貸アパートや賃貸マンションを引き払うとき、「敷金が全額戻ってこなくて当たり前」とほとんどの人が思っているのではないだろうか。
私も例に漏れず、昨年2018年6月まで、そう思っていた。

そう思っていたのは、大学を卒業して実家を出てから何度となく重ねてきた引越で、敷金が全額返金されないことが常だったからだ。
クリーニング代とか、油染みがついたキッチンの壁紙の張り替えとか、あれやこれやの名目でお金が引かれて目減りする。それが普通なのだと思っていた。

しかし実は、よほど常識を超える汚し方をしなければ、敷金は基本的に全額戻されるべきであり、戻ってこなければ請求できるということを知った。昨年6月のことである。

事の発端は、当然のことながら引越だった。
2年弱暮らした賃貸アパートを2月末に引き払った後で、「敷金のお戻しはいつですか?」と不動産屋に電話で問い合わせたところ、「リフォーム業者に入ってもらって確認してから連絡します」と言われた。

しかし待てど暮らせど連絡はなく、2ヶ月が過ぎようとする4月終盤に再び電話をしてみたのだが、答えは前回と同じだった。

ひどい話である。
借りるときは、迫った期日までに敷金を預けなければ入居できない。
なのに、返金となると期限は定めず、ずるずると遅くする。ここまで待たされたのは、幾度となく引越をしている私でも初めてだった。

やっと不動産屋から封筒が届いたのは、5月後半になってのことだった。引越からなんと3ヶ月近くも経っていた。

そして封筒の中身を見た私は、「えっ???」と絶句した。
そこには、敷金の返金額が書かれた「敷金精算書」と一緒に、なぜか業者のリフォーム代金の見積書も入っていた。

リフォーム代金の見積もりは、およそ20万円。

そして「敷金精算書」によると、
DK洗面壁・クロス 33,000円
CFシートDK     28,000円
室内クリーニング   35,000円
合計96,000円(税込 103,680円)が私の負担とされていた。
返金額は、敷金16万円からその負担額が差し引かれた6万円弱のみと記されている。

そりゃないだろう、いくらなんでも。
3分の2近くも引かれたことは、幾度となく引越をした私でも初めてだ。
これだけ待たせた上に、これはなんだ?
怒りがフツフツとこみ上げてきた。

私の負担とされた洗面所の壁が、ひどく汚れていた記憶はない。
DKの床のビニールクロスは、上に無垢材を敷き詰めていたからクロス自体の汚れは最小限だったし、むろん最後にきれいに掃除をして清潔な状態にしてあった。
だから洗面所の壁も、DKの床も、私が貼り替え費用を負担するなど論外だと思った。

最後にリストされている「クリーニング代」35,000円は、契約時に「クリーニング代は負担する」とサインをした覚えがあるから払うのが当然だとしても、壁紙や床のリフォーム代を請求されるのはひどいと思った。

そもそも2年弱しか、そこに住んでいない。
タバコを吸わないからヤニがつくこともない。
犬は飼っているが小型犬で、DKのみならずすべての床に無垢板を敷いていたから爪痕も残っていない。
いわゆる経年変化を超えるほどには、どこも汚していないし傷つけてもいないのだ。

「不当だ!!」と頭から湯気をあげる私に、姉が言った。
消費生活センターに相談してみなよ
なるほど、そういう手があるのか。

そこでまず、その物件のあるM市の消費生活センターに電話をかけた。
すると、「現在住んでいる自治体で相談するように」とのこと。
そこで現在住んでいるT市の消費生活センターに電話をすると、「一度窓口に来てください」と言う。

予約を取り、さっそく出かけた。善は急げ、だ。

持参したのは、
・経緯の要点をまとめたメモ書き
・退去時の写真(スマホ)

私を迎えてくれた相談員のSさんは、エレガントな装いの60代後半くらいの女性だった。
私の説明を聞き、退去時の状態を写真でご覧になると、「ひどいですね。敷金、取り返しましょう」ときっぱりとおっしゃった。

Sさん曰く、「この金額を見ると、リフォーム代金の半額を負担させようという魂胆ですね」。
だけど元来、次の人が住むためのリフォームの費用は大家が負担すべきもので、前の住人が支払うものではない、とSさんは断言した。
しかも、支払って当然と私が思っていた「クリーニング代」も、実は、払わなくてもいいものなのだと言う。

国土交通省の『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』によると、「専門業者による全体のハウスクリーニング(賃借人が通常の清掃を実施している場合)」は、「賃貸人の負担となるもの」と明記されている。
そのコピーを私に示しながら、Sさんは力強くうなずいた。

自宅に戻り、Sさんが教えてくれた要点を踏まえて「申出書」を書いた。そして下書きを一度ファックスでSさんに送り、電話で修正点を教えてもらって完成させた。
重要なポイントは、末尾に「以上の内容は、T市消費生活センターへの相談を踏まえて作成しました。」という一文を加えることだった。

その「申出書」に国交相のガイドラインのコピーを同封して「配達証明」で送ったのが6月の1週目だった。
不動産屋からの電話を今か今かと待ち受けていたのだが連絡はなく、そろそろこちらから電話しようと考えていた22日に、なんと口座に大家名義での入金があった。
ほぼ16万円。振込手数料が引かれただけで、ほぼ丸々、敷金が戻ってきたのだった。

「申立書」の末尾に加えた「以上の内容は、T市消費生活センターへの相談を踏まえて作成しました。」の一文が、水戸黄門の印籠のように効いたようである。
ブラボー!やったやった!

お礼と報告の電話をすると、Sさんはおっしゃった。
「くやしいですね、振込手数料。」
相談員のプライド高く、信念の強い人である。

たしかに敷金を振り込むときはこちらの手数料負担だったことを考えると、今回はあちらが負担して当然だ。再びフツフツと怒りが込みあげそうになったが、そうはいっても、交渉は成功だ。
10万円余、取られずに済んだのだ。よかったよかった、喜ぶべきである。

しかし、ひどい話だったと今も思う。ここまで私が時間と労力をかけ、かつSさんのサポートを受けてやっと、まっとうに敷金を取り戻せたのである。そうしなければ、泣き寝入りだったのだ。

とはいえ、ここまでひどい話じゃなければ、消費生活センターに相談に行くこともなく、これまで通り「3分の1額くらいの目減りはしょうがない」と済ませていたかもしれない。
そう思えば、「終わりよければすべてよし」だ。またひとつ、学んだではないか。

そしてこの私の体験が誰か他の人のお役に立つかもしれないと思い立ち、1年前を振り返りつつ、このブログをしたためた。お役に立つかな、立ったらいいな。

「申立」をするのはちょっとした勇気が必要だし、かなりめんどうだ。
でも、こういう場面に直面した人が一人ひとり異議申し立てすることは、とても大切だと思う。そうすれば不当に敷金を横領する大家が少しでも減るかもしれないし、消費生活センターへの相談件数が多くなれば厳しい対策が図られるかもしれないから。