ポジティブ体質のチームをつくる「ほめたたえる会」のススメ

仕事について

初めて参加した人は、「こんなに褒められたこと、これまでない!」と必ず感動する。
そんな「ほめたたえる会」を思いついたのは、かれこれ6~7年前。以来、編集系のプロジェクトの振り返りの会や、会社のミーティングなどで折々に楽しみながらやってきた。

用意するのは、8cmくらいの四角い付箋と黒いマジックペンだけ。
ルールもいたって簡単だ。

左隣の人の「いいところ」を書き出す。
次は、そのまた左隣の人の「いいところ」を書き出す。
そしてまた次の人……と、自分以外の全員分を書き出していく。
時間はそれぞれ2分間。
スマホなどでタイマーを鳴らして、「はーい時間です、次の人に移りましょう」などと声をかけ、リズミカルにどんどん進めていく。

一巡して全員分書き出せたら、みんなでジャンケンをして順番を決める。
勝った順に、他の人たちから「いいところ」を発表してもらう。

「段取りがいい」「心配りが繊細」「計算が速い」「聞き上手」「アイディアが豊富」「毎朝、みんなのデスクを拭いてて偉い」などと、お褒めのシャワーをじゃんじゃん浴びるのである。

自分が得意だと思っていることをしっかり評価してもらえたり、苦手だから意識して丁寧にやっていることを褒めてもらえたり、「めんどくさいな」と思いながらもやっていたことを誰かがちゃんと見ていてねぎらってくれたりもする。

誰でも褒められると嬉しくなる。
胸がドキドキして、自然に笑顔になる。
しかも意外なことに、褒められるのと同じくらい、褒めるのも嬉しいのだ。他人の「いいところ」に気づけて、それを言葉にできる自分が、なんだか誇らしくて嬉しくなるから面白い。

「ほめたたえる会」の大事なポイントは、1枚の付箋にひとつの「いいところ」を書くことだ。なぜなら、発表するときに1枚ずつ読みながら、その人に渡すことができるからだ。
1枚に複数書いてしまうと、ひとつひとつの「いいところ」に注意が集まりにくくなってしまう。
1枚にひとつだからこそ、「たしかにそうだよなー、この人、いつも心配りが繊細だよなー」などとその良さを噛み締め、味わう時間を共有できるのだ。

これまでの経験では、4~6人くらいのグループでやるのが適当なようだ。2人~3人でも楽しくできるが、ちょっと物足りない。4~6人くらいの人数がいると「おー、そんないいところもあるか!」とか「そんな褒め視点もあったか!」といった多様で豊かな気づきが増える。人数がそれより多くてもできるが、時間がかかって少し間延びするきらいがある。

ポジティブに一緒に成長しようよ

こんな方法を私が考えたのは、会議などで「反省モード」になる人がめちゃくちゃ多いことに気づいたからだった。特に、何かイベントなり企画なりが終わったときに「反省会」という名の会をやると、それが顕著に表れて驚くほどにテンションが下がってしまう。

例えば冊子の制作が終わっての反省会。
「ページの文字数が若干多かった」「もっとグラフや表を入れればよかった」などという「反省点」が出てきたりする。いやいやちょっと待って。当初の編集方針が、文字が多くなっても「読みもの」として編集するってことじゃなかったか? グラフや表より説明文を多くしたのも、その編集方針ゆえじゃなかったっけ? 方針に沿ってうまく完成させたのに、なぜそれを反省しちゃうのか!? ほんとうなら、評価すべきじゃあるまいか。

例えば子どものサッカーチームの夏合宿を引率した保護者の反省会。
「私、何もお役に立てなくて」「私も、みなさんの足を引っ張ってしまって」……えー、ちょっとちょっと、みんなすごくちゃんとやってたじゃない? しかも、子どもたちは誰も怪我はせず熱中症にもならず、楽しく無事に合宿は終えられたのに、なぜそんな「できなかったこと」をあげつらう発表会になっちゃうのか!? こんな調子だと、来年は絶対参加したくなくなるぞ。

「反省会」をすると、ネガティブモードにならなければならない。
そんな暗黙のルールが、この社会にはあるらしい(たぶん、小学校や中学校の教育の影響?)
だけど、そんなことやっていたら前向きになれないどころか、自分にも仲間にも自信が持てなくなってしまう。

だからもう「反省会」はやめようよ、というのが原点だ。
まず、名称は「反省会」ではなく「振り返りの会」にすることを提案する。
そして「振り返りの会」の冒頭では、「ほめたたえる会」で盛り上るっきゃない。

「ほめたたえる会」はアイスブレイクになる。
褒めあって心と頭があたたまったら、今回の成果物の「よくできた点」を、やはり付箋に書き出して順番に発表する。次にプロセスについて「よかった点」、次回またやるときに「目指したい点」、「改善できる点」などに進んでいく。
「できなかったこと」や「よくなかったこと」を発表する機会はつくらず、あくまでポジティブフィードバックで徹底するのが大切だ。

付箋に書き出して発表する形式だと、声の大きい人だけが長々と話をして時間を占有する流れにはならず、みんなが素直に多様な意見を出せるのがいい。
ポジティブに共感しあい、成果とプロセスを共有できたら、次のステップに向かって気持ちよく進めるようになる。次にチャレンジする目標も、楽しい気持ちで共有できる。
それが「振り返りの会」だ。

一度やったら、またやってみたくなる

先日、久しぶりに「ほめたたえる会」をやってみた。
とあるデザイナー事務所さんでのことである。

昨年秋から今年の春にかけて専門学校のパンフレットの仕事をご一緒させていただいたデザイナー事務所さんで、私にとってはその仕事が初のコラボだった。

ご夫婦で運営されていて、一方がデザインのディレクション、一方がマネジメントという役割分担で、個性も特技も異なるお二人が組んでこそという卓越した仕事振りで、終始、気持ちよく仕事をさせていただいた。
その流れで今度は自社のWEBサイトのコピー作成をご依頼いただき、そのブレストの冒頭で「ほめたたえる会」を取り入れてみたのだ。

やってみて開口一番、お二人の感想はやはり「こんなに褒められたこと、これまでない!」だった。
ご夫婦なので、日常生活でも仕事でも行動をともにされることが多い。だけど、日常、意識して褒めあったことはなかったという。

「仕事がはやい」「芯が強い」「絵がうまい」「引き出しが多い」「集中力がある」「どんな人とも人間関係を良好にできる」「物腰がやわらかい」「敵がいない」などと一方が相棒を褒める。
そして今度は相棒が相方を「説得力がある」「スケジュール管理などしっかりできる」「お金の計算がしっかり」「行動力がある」「現場の仕切りがうまい」などと褒める。

それぞれにそれぞれの強みや個性を理解し、認め合っているのがよくわかる「いいところ」がリストアップされた。
お二人の息のあった仕事振りは、その理解と信頼あってこそだったのだなとあらためて感服。

私も加わって、お二人を褒め、お二人から褒めていただいた。
「仕事がはやい」「ベテラン」「的確」「引き出しが多い」「勘が良い。察してくれる」「すみずみまで見てくれて、全体感も見てくれてる」「わかりにくい内容でも、文字数の合わせ方がすごい」「主観ですが、今まででダントツにレベル高」……うふふ、超嬉しかった♪
「日頃のメールの文章がステキ」なんてご指摘もいただいて、「よし! これからも楽しんでメールしよう」と小さく右拳を握った。

「いいところ」を褒め合い、それぞれの得意や強みを言語化して共有すると、爽やかなチーム感が醸されてくる。もちろん、その後の打ち合わせもいい感じの流れになり、心を開いてアイディアや意見を出し合えた。

「今度、専門学校の広報担当者の方々とやってみよう!」とお二人も楽しみが増えたご様子。
やはり打ち合わせでは、「あれができなかった」「ここがまずかった」というネガティブフィードバックが多いのだそうだ。打ち合わせでいつも黙ってばかりの若い職員さんもいるという。

「ほめたたえる会」で心をゆるめてスタートすれば、次回のパンフレットはさらに魅力的な仕上がりになるに違いない。

「私たちもやってみたい。でも、はじめは手伝って」という方、どうぞご依頼ください。喜んでお手伝いしますよ♪