つくるぞ!父のエッセイ集!

編集のあれこれ

父のエッセイを一冊の本にすることにした。

「一冊の本」といっても、オンデマンドで40~50部くらい印刷・製本する、超ミニマム出版である。「できあがったら、家族や親戚、父の友人知人に送ろうね」という、いわば家族のお楽しみ企画だ。

父が書き溜めた文章は、それほど多いわけではない。たぶん全部一緒にしても、1冊に十分まとまると思う。だけど、それでは散漫な本になってしまう。

1冊の本にするには、いくら超ミニマム家族本だとしても、一串、何か全体を貫くものが欲しいと思うのだ。

あらためて、編集者の目でざっと読んでみた。
すると、父が『三高会』の『回覧板』で知人たちに向けて書き綴っていた文章がなかなか面白いことに気づいた。

『三高会』とは、旧制第三高等学校の卒業生の会のことだ。
もともとは北海道在住の卒業生の同窓会として組織され、一時期は札幌のホテルの広間を借りて盛大に懇親会を催していたそうだが、時とともに物故者が増えて解散となった。

それでも残った7~8人のメンバーが、近況を知らせあう仕組みとして運営していたのが『回覧板』だったという(数年前からは、途絶えたままになっているのだが)。
昨年2018年9月に88歳になった父は、学制が改革される前の1年だけ旧制第三高等学校に通った最年少のメンバーで、そのグループでは幹事として『回覧板』の取りまとめを任されてきたという。

『回覧板』というのは、一人目が自分の原稿を封筒に入れて二人目に送り、二人目は自分の原稿を追加して三人目に送る……そして、一人目に戻ったら自分の原稿を取り出して二人目に送る……という具合で、全員が全員分の原稿を読める仕組みだ。
よく考えられている。

封筒が届いたら、なるべく早く次の人に送らなければならないから、ほどよい締め切り感もあったことだろう。
デジタル世代なら添付ファイルでCCメールで送ってしまうところだが、アナログ世代の味わい深い郵便の『回覧板』の仕組みである。

手元のファイルに残っている『回覧板』向けの父の原稿は、2001年から2016年までの10編。
それ以外にも旅や料理について綴った文章もあるのだが、この『回覧板』のために書いた原稿がとりわけ興味深く感じられるのは、おそらく読み手を意識して書いていたからだと思う。自意識の表出がほどほどに抑えられ、文章が素直で読みやすいのだ。

古いパソコンが壊れて元原稿のデータは全て失われたというので、ゴールデンウィーク中に父母の家に滞在中、ノートパソコンでちゃかちゃかと打ち直してきた。
ちゃかちゃか打っている私を見て、父は「タイピストみたいに速いな」。どこまでもアナログ世代だ(笑)。

これから、『紙のBCCK』で作ってみようと思っている。